接近と回避の法則
私たち人間は、快楽へ向かって進み、苦痛から遠ざかる行動をとるように設計されています。
これは、人間に、快楽に接近する本能と危険を回避する本能がプログラムされているからです。
人間は、必ず、快楽への接近と危険の回避のいずれかの動機に基づいて行動します。
自分のプラスになると信じる人間・もの・出来事に接近し、自分のマイナスになると信じる人間・もの・出来事を回避する人間の習性を「接近と回避の法則」と呼びます。
人の行動を変えようとするときは「接近と回避の法則」を意識すべき
接近と回避の法則に逆らって、人の行動を変えようとすると失敗に終わります。
人の行動を変える手段として、もっとも多く使われるのが依頼です。
依頼を受けることによる報酬がなかったり、あるいは、依頼を受けないことによる罰がないのであれば、人は依頼を受けません。
報酬なしの依頼
初めての依頼であれば、報酬なしでも、相手は依頼主に友好性を示せるというリターンを自分で作りだせるので、依頼を快く受けてくれるかもしれません。
しかし、2回目、3回目と報酬なしの依頼を続けると、相手は「またかよ」といったうんざり感を抱くようになり、依頼を受けなくなります。
罰なしの依頼
相手のマウントをとって、依頼を受けなければ「使えないヤツ」というレッテルを貼るなどの不安をあおれば、相手はその危険を回避したいので依頼を受けます。
会社の人間関係でよくあるやつです。
しかし、相手がフェアな立場で依頼をしてきており、依頼を受けなくても自分に風評被害がないとなれば、相手を心理的に圧迫するものはなくなるので、相手は依頼をあっさりと断ることができます。
人に影響を与え、人の行動を変えようとするときは、接近と回避の法則を明確に意識できることが大切です。
にもかかわらず、ほとんどの人が、接近と回避の法則をいつの間にか無視しています。
人に影響を与え、動かそうとするときは、接近と回避の法則を意識して、リターンとして相手に与える報酬、または、行動しないことで相手に与える罰を考えた上で、戦略を練る必要があります。
人を行動させたければ報酬を与えることが有効
私たちは、人を行動させようとするとき、報酬を与えるポジティブな戦略よりも、危険や不安や恐怖をあおるネガティブな戦略をとることの方が圧倒的に多いです。
これは、報酬を与える方が難易度が高いからです。
人に与えられるような報酬をもってないことがほとんどです。
それに比べ、危険、不安、恐怖などのあおり行為を行うのは誰でも簡単にできます。
しかも、報酬をさしだす必要がなくタダです。
このため、他人を行動させようとするとき、危険を呼びかけたり、不安や恐怖を案じさせるネガティブな戦略によることが多くなりです。
しかしながら、この戦略は、お手軽な分、効果は悪いです。。
危険、不安、恐怖は、人の気持ちを落ち込ませ、人を動かすよりも固まらせてしまうからです。
事実、差し迫った脅威は、私たちの血の気を引かせ、凍りつかせます。
これを「すくみ反応」といいます。
私たちは、危険に出くわすと足がすくむDNAを先祖から受け継いでいます。
私たちの祖先の時代の危険といえば、猛獣などの捕食者です。
猛獣は動きを捉える能力が高いため、へたに動いて見つかってしまうと食い殺されてしまいます。
私たちの祖先の時代では、危険に出くわしたときに不動でいれば、命が助かることもあったということです。
すくみ反応を示してしまう私たちは、他人から危険や不安や恐怖をあおられ、行動をさせられるとパフォーマンスが発揮できないのです。
それどころか、人によってはメンタルを病みます。
報酬が行動を導く
他人に行動してほしいと望むなら、危険や不安や恐怖をあおるよりも、報酬を約束して喜びを予期させる方がうまくいきます。
ポジティブな期待感は、獲物を狩りに行くように、人を行動に駆り立てるからです。
報酬を与えることで、その見返りとして他人を行動させるのが本来あるべき姿です。
人に行動させたいのであれば、報酬を与えることができる力がなければなりません。