人は、目の前の人の状態に影響を受け、人間関係のポジション取りが変わります。
たとえば、目の前の人が、ブラック上司であれば、部下は、その上司の顔色をうかがいながら仕事をするポジションをとらされることになります。
このような現象は、「人間関係のマトリックス」という図で表し、説明することができます。
この表に、ブラック上司と部下を当てはめると以下のようになります。
まず前提として、人間のタイプは
- ポジティブ自立
- ポジティブ依存
- ネガティブ自立
- ネガティブ依存
の4種類に分けられます。
ブラック上司は、「ネガティブ依存」に当てはまります。
ブラック上司の目の前にいる部下は、「ポジティブ依存」に当てはまります。
ネガティブ自立の特徴
ネガティブ自立の特徴は、次のとおりです。
- (+)完璧主義で、物事を確実に進めようとする
- (+)他人をコントロールして、やりとげることが大切だと考えている
- (+)人が気づかないような細かい所をチェックする能力に長けている
- (-)イライラしやすく、冷たい印象をもたれることがある
- (-)正論を吐き、相手を打ちのめすことをやってのける
- (-)目標達成のために、人に威圧的に接したり、コントロールすることをいとわない
- (-)目的のためには犠牲をいとわない
- (-)自分は有能だと思っているので、相手が無能に見える
- (-)いじめっ子の気質があり、内なる暴力性をかかえている
- (-)いつもピリピリしてるので、他人を緊張させて、他人の能力を低下させる
ブラック上司は、「もし失敗したらどうするんだ!?」などと言い、部下を煽って、精神を追い込むことで支配しようとするので、まさにネガティブ自立です。
ポジティブ依存の特徴
ポジティブ依存の特徴は、次のとおりです。
- (+)穏やかで、人を安心させたり、癒したりする
- (+)良い空気を作り、まわりをリラックスさせる
- (+)調和を作り出すことに長けている
- (-)無害でいることを一番に考えている
- (-)相手にコントロールされることで、愛されると思っている
- (-)気がついたら、ネガティブ自立の人に怒られている
- (-)不安を感じて、人の顔色をうかがい、どもったり、オドオドしやすい
- (-)何かあると頭が真っ白になって思考停止してしまうことが多い
- (-)ネガティブ自立の人との組み合わせになると、普段は有能な人でも、不安や恐怖で思考力が低下し、ミスをしたり、段取りが悪い人間になってしまう
- (-)他人のイライラの矛先が向けられやすく、批判や攻撃を受けやすい
- (-)いじめのターゲットにされやすい
- (-)反抗する力を放棄するので、悪者にされやすい(なぜ自分が悪者にされるかも分かっていない)
ブラック上司の目の前にいる部下は、上司の顔色をうかがい、空気を読んで、いつもどおり振る舞おうとするが、つねに不安と恐怖を感じ、明晰な思考ができないことから、ポジティブ依存に当てはまります。
相手との関係によって、自分の立ち位置が決まってくる
重要なのは、部下は、もともとポジティブ依存のポジションにいたわけではないということです。
人間関係は、必ず相手との関係によって、自分の立ち位置(ポジション)が決まってきます。
もともと自分の立ち位置は、固定化され、定められているわけではないのです。
部下は、ブラック上司と人間関係を持つことになったがために、ブラック上司のポジション「ネガティブ自立」の対極の「ポジティブ依存」に強制的に飛ばされてしまったのです。
人間関係は、特別に意識をしなければ、一対一の対(つい)の関係になります。
人は、相手のポジションに影響されて、自分のポジションが決まるということです。
ブラック上司と部下のように、相手が「ネガティブ自立」なら、自分は「ポジティブ依存」のポジションをとらされます。
あるいは、相手が「ネガティブ依存」(ex くよくよ悩む人)なら、自分は「ポジティブ自立」(ex 人格者リーダー)のポジションをとってしまいます。
また、その逆も然りです。
人間関係のマトリックスは、すべての人間関係が、中心点をはさんで、対極線上に分かれてしまいがちだということを示すものです。
たとえば、以下の図のように、友人が「ポジティブ自立」のAの位置にいたら、あなたはAより右下周辺の赤色の範囲内のどこかにポジションをとる可能性が高いということです。
ちなみに、友人が「ポジティブ自立」だけれども、あなたも、友人と同程度か、友人よりも弱い「ポジティブ自立」のポジションをとることもありえます。
なので、友人が「ポジティブ自立」だから、あなたは対極の「ネガティブ自立」に必ずしも追いやられるというわけではありません。
人間関係のマトリックスの中心ほど平穏、はじっこは地獄
人間関係のマトリックスでは、中心点に近いほど、心が平穏でいられます。
逆に、中心点から離れれば離れるほど、人間的なバランスを欠き、破壊的になっていきます。
人間関係のマトリックスのはじに行き過ぎると、精神的に異常となり、地獄に落ちると考えてもらえばOKです。
人間関係のマトリックスの各ポジションは、それぞれに良い所と悪い所があります。
そのため、「ポジティブ自立にいる自分は正しい」、「ネガティブ依存にいる相手は劣等だ」といった考え方は間違っているので、留意が必要です。
「ポジティブ自立」と「ネガティブ依存」の特徴
「ポジティブ自立」と「ネガティブ依存」の特徴を書いていなかったの書きます。
ポジティブ自立の特徴
- (+)前向きで明るく、エネルギッシュである
- (+)明るいリーダーシップがとれる
- (+)進んで問題解決に取り組み、弱音を吐かない
- (+)人を巻き込んでいく力が強い
- (+)他人を励まし、ヴィジョンを掲げ、みんなに方向性を示す
- (+)人をワクワクさせたり、情熱を伝染させたりするカリスマ的な力をもっている
- (-)みんなをリードしていくのが偉いと信じている
- (-)前向きに前に進むことがすばらしい生き方だと確信している
- (-)周りに貢献するのが人生だと思っている
- (-)誰かを助けると愛されると思っている
- (-)人を励ますとき、上から目線になりがち
- (-)自分にはパワーがあって、人を勇気づけられると勘違いしている
- (-)無神経な励ましが、相手の気分を落とすことがある
- (-)具体的なアドバイスを連発するなど、同じ気持ちを感じてくれるだけでいいという人の気持ちに気づけない
- (-)熱量が高すぎたり、現実離れし、他人がひいてしまったり、他人の心に添えないことがある
- (-)さまざまな問題が起きても、ポジティブ思考に突き抜けて、問題を見逃す
- (-)ネガティブ依存の人たちに支えられて、ヒーローになっていることに気づいていない
ネガティブ依存の特徴
- (+)感受性が高く、他人に深く共感できる
- (+)問題を見つけるのが得意
- (+)人が傷ついたり、苦しんでいるときに、フォローするのがうまい
- (+)人の言葉に耳を傾け、共感する能力が高いので、カウンセラーなどの仕事に向いた才能がある
- (-)ものごとのネガティブな側面を見がち
- (-)共感し、感情的に深く感じるのがすばらしいと思っている
- (-)感情的な問題からうまく抜け出せない
- (-)過去のトラウマをいつまでも引きずり、昔のことでくよくよ悩み、文句を言い続ける
- (-)人が互いに優しさを与え合わないことに憤りを感じる
- (-)みんなが、自分のように優しくなったら世界は良くなると思っている
- (-)ネガティブなことばかり言って、周りを嫌な感情に巻き込む
- (-)ポジティブなアドバイスに、最終的に耳を貸さない
- (-)絶望感、無力感にはまってしまい、自分の感受性の高さを自分を打ちのめすことに使う
- (-)人生は苦しく、怖いものだと感じており、自分が感じているものは、実は脳が作り出した幻想であることに気づいていない
- ポジティブ自立のタイプとパートナーになることが多い
続きの記事
人間関係のマトリックス② ~人間関係は行き過ぎると地獄に落ちる~
人間関係のマトリックス③ ~人間関係で苦しむのは、性格ではなく、ポジションどりのせい~
人間関係のマトリックス④ ~自分の内面でも、人間関係のマトリックスの力は働く~