学習

【親近効果、冷水実験】終わり方によって、記憶の形成のされ方が変わる

記憶はあらすじを脳内メモリに保存する

 記憶は、過去の経験をノーカットで覚えていません。

 人は、経験のあらすじを脳内メモリに保存して記憶しています。

 記憶する経験のあらすじは、人によって異なります。

 人は、経験した出来事を、自分が見たいように、かつ、独特な形で脳に記憶するからです。

 複数の人が同じ経験をしても、人それぞれで覚えていることが違うのは、このためです。

親近効果 ~記憶は最後の場面をもっともよく思い出す~

 記憶の独特な性質の一つが、最後の場面へのこだわりです。

 脳には、最初や途中の場面より、最後の場面の方がはるかによく思い出せるという傾向があります。

 映画のワンシーンを思い出すとき、最初や途中の方のシーンより、最後の方のシーンの方が思い出しやすいものです。

 このように、終わりの印象が記憶に残りやすい心理作用を

親近効果

といいます。

 人間は、親近効果の働きにより、最後の場面のことが頭に残りやすいのです。

終わり方によって、記憶の形成のされ方が変わる

 記憶は、最初や途中の方の場面より、最後の方の場面をよく覚えているという性質があるために、最後の方にどのような場面がくるかによって、記憶の形成のされ方が変わります。

冷水実験

① 冷水に手を60秒間入れる(冷水はずっと冷たい14℃を保つ)

② 冷水に手を90秒間入れる(冷水は最後の30秒間だけ、少しましな15℃にこっそり上げる)

 複数人の被験者に①と②を体験させ、あとで被験者にどちらが苦痛だったかを思い出させて答えさせます。

 普通に考えると、冷水に手を入れる時間が短い①の方が、苦痛は少ないと思われます。

 しかし、結果として、被験者たちは、冷水に手を入れる時間が短い①の方が、苦痛だったと答える傾向が確認されました。

 ②は、冷水に手を入れる時間が長いにもかかわらず、終わり方がわずかに温かめになったおかけで、苦痛がマシだったと記憶されたということです。

 「終わりよければすべて良し」という格言は、脳の記憶の仕組みの観点からしても当たっているのです。

  

 この冷水実験の傾向は、日常生活にも当てはまります。

 例えば、

  • 別れたり、離婚したカップルは、もともと本当に幸せではなかったと記憶している
  • 仕事でミスをして終わると、周囲から「あのとき仕事でミスしたヤツ」という記憶を持たれる(序盤~中盤の仕事の評価は抜け落ちる)

などがあげられます。

 人は、『終わり方によって、記憶の形成のされ方が変わる』ことを覚えておきましょう。

 良い終わり方ができれば、今がチャンスと考えて、どんどん前に進んでいけます。

 悪い終わり方をしてしまったら、その後も悪い流れを引きずるので、いっそうの努力をして巻き返しをはかるか、もしくは、その環境を切り捨て、再出発をはかるのも手です。