仕事で市役所などの官公庁と取引を行うとき、官公庁の担当者から参考見積書の提出を依頼されることがあります。
最初は参考見積とは何なのか、なぜ参考見積書を提出する必要があるのか疑問でした。
しかし、仕事をこなすうちにその疑問を解決することができたので、みなさんに実務に則して分かりやすく説明します。
参考見積を理解するための前提知識
見積合わせ
官公庁は、恣意的に契約する業者をピンポイントで選んで取引を行うことはできません。
例えば、官公庁が机1台を購入したいと考えたとき、いつもお世話になっているA社から買いますと言ってA社に机1台を発注して購入することはできません。
官公庁の物品の購入や工事・役務の発注は、複数の業者に価格競争をさせ、最も安価な価格を提示した業者と取引しなければならない法律になっているためです。
官公庁は、競争により契約業者を決めなければならないと理解すればよいです。
この理屈の大本の根拠法令は、会計法29条の3になります。
この条文から、官公庁の契約は競争が原則という理屈が導かれています。
会計法29条の3 契約担当官及び支出負担行為担当官(以下「契約担当官等」という。)は、売買、貸借、請負その他の契約を締結する場合においては、第三項及び第四項に規定する場合を除き、公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならない。
この条文「公告して申込みをさせる」とありますが、これは「入札」のことをいっています。
官公庁は、契約金額が高額になる場合(例えば、物品の購入の場合は160万円以上)は、入札を行わなければなりません。
しかし、契約金額が高額にならない場合は、官公庁は、「見積合わせ」で契約業者を決めることができます。
見積合わせの方が入札より手続が簡素なので、 官公庁にとしては見積合わせの方がコスパ良く仕事ができるといえます。
官公庁から、見積合わせに参加する業者に指定されると、見積書の提出を依頼されます。
そして、見積書を提出した全ての業者の中で、最も安価な価格を見積書に記載した業者が官公庁と契約をすることになります。
ちなみに、官公庁との契約は、価格の安さが全てです。
価格勝負において、見積書の提出が早いとか、営業マンの対応が良いとか一切関係ありません。
サービスを良くしようとしてオプションをつけて見積金額を高くすると他社に負けます。
なお、対応が悪いと、今後、官公庁から見積合わせに参加する業者に指定されない可能性はあるので気を付けた方がいいと思います。
予定価格
官公庁は、見積合わせを行う前に、予定価格を決めます。
予定価格とは、「この金額以下でなければ、どの業者とも契約しない」とする価格のことです。
例えば、官公庁が予定価格を30万円に決めて、A社、B社、C社の3社で見積合わせを行ったとします。
見積合わせの結果、見積金額が、A社は31万円、B社は35万円、C社が40万円だったとします。
A社が31万円で見積金額が一番安価ですが、予定価格の30万円を下回っていないので、官公庁はA社と契約しない(できない)ことになり、官公庁はどの業者とも契約しないという結果になります。
私の経験上、このような事態になった場合、官公庁は値引きの話を持ち掛けてきます。
「もう少し安い金額の見積書の提出はできますか?再度、見積合わせに参加してもらえませんか?」という話をしてきます。
官公庁は、もう一度、見積合わせに参加したA社、B社、C社から値引きした見積書を提出させ、予定価格の30万円を下回る見積書をとりくるわけです。
これを「再度の見積合わせ」といいます。
再度の見積合わせに参加するかどうかは、業者の任意なので、値引きした見積書を提出できない業者は、再度の見積合わせを辞退してOKです。無理に付き合う必要はありません。
参考見積とは?~官公庁が参考見積を依頼する理由~
見積合わせと予定価格を理解したところ、ようやく参考見積について説明します。
見積書には2種類あります。
1つ目は、見積書(本見積)です。
2つ目は、参考見積書(参考見積)です。
見積書(本見積)とは、見積合わせで、他社に価格競争で勝つための価格を記載した見積書をいいます。
見積合わせの本番で使う値引きを利かせた見積書と考えてください。
参考見積書(参考見積)とは、官公庁が予定価格を立てるために使う見積書であり、見積書(本見積)より高めの金額を記載した見積書のことです。
官公庁は、予定価格を立てなければなりません。
その予定価格の根拠となる資料にするために、業者に参考見積書の提出を依頼してくるのです。
ぶっちゃけた言い方をすると、参考見積書は、業者が官公庁の会計事務手続に協力するために提出する資料といえます。
業者側からすれば、見積書の提出自体に官公庁からお金はとれませんので、単にコストと手間がかかる作業になります。
とはいえ、参考見積を依頼されるということは、官公庁から信頼されている証であり、見積合わせ参加依頼の声をかけてもらいやすくなるので、協力した方がいいと思います。
参考見積書の作り方
参考見積書の作り方は、見積合わせ本番で提出する見積書(本見積)とほぼ同じです。
見積書(本見積)の作り方と異なるところは、金額の設定の仕方です。
参考見積書は、官公庁が予定価格を立てるための資料です。
官公庁は、参考見書書の金額を基に市場価格を認定するなどして予定価格を決めます。
参考見積額を安くしすぎると、官公庁が市場価格の判断を誤ってしまうので、値引きなしの一般的な価格を参考見積書には記載する必要があります。
私の経験上、参考見積書に記載する金額は、本番の見積書(本見積)の額より数割程度増した額を記載するのがちょうど良いように思います。
まとめ
参考見積書の作り方は、
- 見積合わせ本番で提出する見積書(本見積)と金額の設定以外は同じ
- 金額は、本番の見積書(本見積)の数割増しで設定する
となります。