刑訴法論文(12)~平成28年司法予備試験の刑事訴訟法論文問題から学ぶ~
平成28年司法予備試験の刑事訴訟法論文問題から学ぶ
平成28年司法予備試験の刑事訴訟法論文問題の答案を作成してみました。
この論文からは以下のテーマが学べます。
1⃣ 同一の被疑事実での再逮捕・再勾留は適法性
2⃣ 判決書謄本の証拠能力
問題
法務省ホームページの「平成28年司法試験問題」参照(問題文PDFリンク先)。
答案
設問1
1 ①の逮捕・勾留は、平成28年3月23日から同年4月13日までの逮捕・勾留と同一の被疑事実による逮捕であるが、このような再逮捕及び再勾留は適法か。
2 刑事訴訟法が被疑者の身体拘束期間を厳格に制限している(刑訴法(以下法令名省略)203条、204条、205条、208条等)ことに鑑みれば、同一被疑事実についての再逮捕及び再勾留は、これらの期間制限の潜脱手段になり、逮捕権が濫用されて被疑者の人権が侵害されることになり得るため、許されないのが原則である。
しかし、被疑者を釈放した後に新証拠が見つかるなど、新たな逮捕の必要性が出てきた場合にまで同一被疑事実による再逮捕及び再勾留が常に許されないとすると、真実発見(1条)の見地から妥当でない。
また、199条3項及び刑事訴訟法規則142条1項8号は、再逮捕を予定した規定となっている。
再勾留については明文規定がないが、逮捕手続と一連一体をなすものであることから、逮捕と同様に再勾留を認めるべきである。
そこで、新たな逮捕・勾留の必要性があり、かつ法の身体拘束期間制限の潜脱とはいえないような場合、具体的には、①釈放後に新証拠が見つかるなどの新たな逮捕・勾留の必要性があり、②被疑事実が重大であるなど、再び身体を拘束される被疑者の不利益を考慮してもなお再逮捕・再勾留をすることが社会通念上相当といえ、③逮捕・勾留の不当な蒸し返しとはいえないような場合には、再逮捕及び再勾留も適法であるというべきである。
3 本件では、平成28年4月13日に甲が処分留保で釈放されているところ、その後の捜査において、甲が同年3月5日にV方で盗まれた彫刻1点を古美術店に売却していたことが明らかになっている。
上記逮捕にかかる同年3月1日のV方放火事件において、V方居間にあった美術品の彫刻1点が盗まれていることが明らかになっており、盗品をわずか4日後に保有していた甲は、V方に侵入して彫刻品を盗んだ上で放火したが強く推認できる新証拠である。
また、被疑事件は窃盗罪のみならず現住建造物等放火罪であり、生命、身体、財産に対して強い侵害要素を持つ重大犯罪であることからすれば、再逮捕を認めて犯罪を解明すべき必要性は高い。
新証拠の存在及び事案の重大性からすれば、同一の被疑事実で再逮捕及び再勾留を行っても、逮捕・勾留の不当な蒸し返しとはいえず、甲の身体の自由を不当に害するとまではいえないので、なお相当性を有する。
4 よって、①の逮捕及び勾留は適法である。
設問2
1 ②の判決書謄本を甲の公訴事実における犯人性立証のための証拠として用いることができるか。
2 ②の判決謄本は、甲の前科という本件被疑事実と同種の犯罪についての同様の手口の前科をその内容とするため、本件被疑事実との間に必要最小限度の関連性があるといえ、自然的関連性が認められる。
3 法律的関連性は認められるか。
⑴ 同種前科があることは、通常それ自体から犯人性を推認させるものではなく、前科の存在によって犯人の犯罪性向等の悪性格を認定し、その悪性格を介して犯人性を推認するという過程を経ることになる。
これは、裁判官に対して不当な偏見を生じさせ、誤った判断を招く危険性がある上、この危険を回避するために当事者が前科の内容に立ち入った攻撃防御を行う必要が生じ、争点が拡散するおそれがある。
よって、原則として、同種前科事実の存在を証明する証拠は、犯人性との証明との関係では、法律的関連性は認められないと解する。
もっとも、悪性格立証を介在せずに犯人性を推認できる場合は、誤った判断に至る危険性も争点拡散のおそれもない。
そこで、客観的根拠の乏しい人格的評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められる場合、すなわち、前科に係る犯罪事実が顕著な特徴を有し、かつ、それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似する場合には、法律的関連性が認められると解する(最高裁判決 平成24年9月7日)。
⑵ 本件につき、美術品の彫刻が盗まれている点での一致は、窃盗の目的物として彫刻を盗むことが不自然ではなくよくあることといえるため、これのみをもって犯行手口に顕著な特徴があるとはいえない。
また、放火に際して、ウイスキー瓶にガソリンを入れた手製の火炎瓶を使用することも、火炎瓶を自作するに際してガソリンを用いることが何ら不自然ではないため、顕著な特徴とはいえない。
もっとも、ウイスキー瓶を使用すること、それにガソリンを入れた手製の火炎瓶を使用すること、放火の際に彫刻品のみを窃取すること、というすべての点がそろって共通する犯罪が行われることはありふれたものとはいえない。
そうだとすれば、全てを総合考慮すると、犯行の手口が顕著な特徴を有しているものといえ、本件事情の下では法律的関連性が認められる。
4 ②の判決謄本は、公判廷外の供述を内容とするものであり、伝聞証拠(320条1項)に当たるが、323条1号の公務員の証明文書に当たり、伝聞例外として証拠能力が認められる。
5 以上より、②の判決書謄本を犯人性の立証のために証拠として用いることができる。