令和3年司法予備試験の刑事訴訟法論文問題から学ぶ

 令和3年司法予備試験の刑事訴訟法論文問題の答案を作成してみました。

 この論文からは以下のテーマが学べます。

1⃣ 準現行犯逮捕

2⃣ 接見指定

問題

 法務省ホームページの「令和3年司法予備試験問題」参照(問題文PDFリンク先)。

答案

設問1

1 ①の逮捕は、準現行犯逮捕(刑事訴訟法(以下、法令名略)212条2項)として適法か。

2 憲法33条は、令状主義の例外として、被逮捕者が「現行犯人」(212条1項)であるときは令状によらないで逮捕できるとしている。

 憲法が現行犯人について令状主義の例外を認めるのは、㋐現行犯人は、逮捕者にとって犯罪と犯人が明白であるため、誤認逮捕のおそれがないこと、㋑犯罪を制圧するなど、速やかに犯人を逮捕する必要性が高いことにあると解する。

 このことから、現行犯人といえて現行犯逮捕が認められるためには、①犯罪と犯人の明確性、②犯行と逮捕の時間的場所的接着性、③逮捕の必要性(刑事訴訟法規則143条の3)の全ての要件を満たすことが必要であると解する。

 その上で、準現行犯逮捕は、212条1項に規定された現行犯人に求められる現認性及び時間的場所的接着性がなくても、同条2項各号に該当するものが、「罪を行い終わってから間がない」と明らかに認められるときに現行犯人とみなし、無令状での逮捕を認めるものである。

 同項各号の事由は、罪を行い終わってから間がないことを推認させる事情を類型化したものであり、犯罪と犯人の明確性を推認させる事情でもある。

3 甲は「罪を行い終ってから間がないと明らかに認められる」者といえるか。

 本件につき、PらはVの通報を受けてV方に臨場し、Vより住居侵入、強盗傷人の犯人らの特徴を聞き出した上、V方マンションの防犯カメラ影像を確認し、犯行時刻と近接した時点において犯人らと特徴の一致する2名の男が走り去ったこと、そのうち1名が被害品と特徴の一致するバックを所持していたことを確認している。

 その上で、Pらは、犯行から約2時間後、V方から約5キロメートル離れた路上で犯人の特徴と一致する甲、乙を発見しており、犯行の時間的場所的接着性が認められる。

 甲については、被害品と特徴が一致するバッグを所持していた上、Pの「ちょっといいですか」という声掛けにより逃げ出していることから、甲が本件犯行の犯人であることが推認できる状況であった。

 これらの状況から、甲が本件犯行の犯人であることが明確であるといえ、甲は「罪を行い終ってから間がないと明らかに認められる」者に当たる。

4 212条2項各号の要件を満たすか。

 甲は、被害品と特徴をの一致するバッグを所持していたのだから、同項2号「贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき」に当たる。

 さらに、甲は、Pから声掛けにより逃げ出していることから、同項4号の「誰何されて逃走しようとするとき」に当たる。

 よって、同項2、4号の要件を満たす。

5 逮捕の必要性を満たすか。

 本件犯行は、住居侵入、強盗傷人罪という重大犯罪であり、犯人が処罰を免れるために罪証隠滅や逃亡するおそれが高いことから、逮捕の必要性が認められる。

6 以上より、①の逮捕は、準現行犯逮捕(212条2項2、4号)の要件を満たし、適法である。

設問2

1 ②の措置は、接見指定(刑訴法39条3項本文)として適法か。

2 接見指定は、「捜査のため必要があるとき」に限りなし得るとされるところ、このように接見指定を限定するのは、接見交通権(刑訴法39条1項)が、被告人・被疑者の弁護人選任権(憲法37条)という憲法上の権利の保障を実現化し、被告人・被疑者の防御の利益を確保する重要な権利だからである。

 そこで、「捜査のために必要があるとき」とは、被疑者の接見交通権という重要な権利の犠牲を正当化できる場合、すなわち、接見を認めることで捜査に顕著な支障を生じる場合に限られるべきと解する。

 具体的には、①被疑者の取調べ中である、②まさにこれから被疑者の取調べを行うところである、③被疑者を実況見分や検証に立ち会わせているといった場合が挙げられる。

 さらに、接見指定は、「防御の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはならない」(同条3項ただし書)とされる。

 特に、逮捕後の初回接見については、外部との連絡手段が遮断されている被疑者にとって、自己の防御の利益を確保する重要な手段となるので、むやみに制限してはならない。

 かかる観点から、初回接見については、弁護人と十分協議した上、できる限り早い段階で接見交通をなしうるよう配慮を尽くす必要があり、かかる配慮を欠いた場合には、「防御の準備をする権利を不当に制限」したものとして、違法となるものと解する。

3 本件につき、S弁護士は甲の逮捕当日の午後5時頃、Rに電話で同日午後5時半から30分間の接見を申し出ている。

 一方、Rらはこのとき甲の捨てたというナイフの発見押収及び実況見分を予定し、搜査員や車両の手配を完了した上で現に出発しようとしていたところであった。

 甲は強盗傷人という重大な被疑事実で逮捕されており、準現行犯逮捕されているから嫌疑も高いと考えられる。

 そして、強盗に使用したナイフを捨てたと供述しており、捨てた場所は地図で説明できるほど明確に記憶していないから、記憶が減退しないうちに甲本人に証拠物となりうるナイフの投棄場所を案内させて発見押収する必要性が高い。

 さらに、S弁護士の申出通りの接見を認めると現場が暗くなり実況見分が実施できない状況となってしまう。

 以上を考慮すると、RがS弁護士の申出通りの接見を認めることにより捜査に顕著な支障が生じるといえるから「捜査のため必要があるとき」に当たる。

4 もっとも、甲はS弁護士以外に弁護人等と接見をしていないから、S弁護士との接見は初回接見であり、今後の計画について打合せするなど防御の準備のため特に重要な機会である。

 そこで、Rが翌日午前9時以降に接見してほしい旨S弁護士に伝えたことが、甲の防御権の不当な制限として違法ではないか。

 本件において、S弁護士は甲の逮捕当日午後5時半から30分間の接見を申し出ており、同日においてこの時間以外には接見の時間が取れないこと、翌日午前9時以降なら接見の時間が取れるが何とか本日中に接見したい旨述べている。

 そうだとすれば、RがS弁護士の申出通りに接見を認めず翌日午前9時以降に指定したことは、ことさらに接見の時間を遅らせることにより甲の防御権を不当に制限するものとして違法な接見指定であると思える。

 もっとも、前述のとおり、S弁護士の接見申出の時点においてRらは捜査上必要性の高いナイフ発見・実況見分に出かけようとしていたところであり、申出通りに接見は認められない状況であった。

 そして、同日実況見分から帰ってきた後に接見指定が可能だったかもしれないが、その時間にS弁護士は時間が取れなかったから、一番近接した時点でS弁護士の都合のつく翌日午前9時以降に指定したことは、上記事情に鑑みると申出から可能な限り近い時点で接見指定したものといえる。

 そうだとすると、Rの接見指定は被疑者の防御権を不当に制限するものではない。

5 以上より、②の措置は接見指定として適法である。

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