視点のズレとは?
「視点のズレ」とは、
人は、現に心理的・身体的な興奮状態を経験していないとき、出来事が自分に与える影響をひどく過小評価する現象
をいいます。
たとえば、仕事の先延ばしは、「視点のズレ」に陥っている例です。
仕事の期限に余裕があるときは、「まだまだ余裕。後でやればいいや。」と思ってしまい、仕事の先延ばしをしてしまいます。
こうなる理由は、今現在、仕事の期限が迫ったときの切羽つまった心理的興奮が起こっていないため、将来、仕事の先延ばしが自分に与える影響をひどく過小評価してしまうためです。
「視点のズレ」を起こし、仕事の期限が迫って慌てふためく将来の自分の視点になれなかったため、仕事の先延ばしをしてしまうのです。
研究事例
「視点のズレ」に関して、アメリカのケロッグ経営大学院の心理学者ロラン・ノルドグレンの実験があります。
実験内容
以下のグループ1から3の被験者に、冷凍室で5時間すわり続けるのは、どれくらいつらいかを予測してもらう。
【グループ1】
お湯の入ったバケツに腕を入れた状態で予測してもらう
【グループ2】
氷水の入ったバケツに腕を入れた状態で予測してもらう
【グループ3】
氷水の入ったバケツに腕を入れ、腕をバケツから出して10分経ってから予測してもらう
結果
グループ2(氷水バケツ)は、グループ1(お湯バケツ)よりも、冷凍室のつらさを14%多く予想した。
グループ3(冷水バケツ→10分経ってから予測)のつらさの予測は、グループ1(お湯バケツ)と同じであった。
考察
グループ3は、10分前には、氷水に腕を入れて冷たさを感じていても、予測を行った時点で冷たさを感じていなかったため、冷凍室にいることの冷たさのつらさを想像できなくなったということです。
この現象を引き起こしたのが「視点のズレ」です。
人は、現に心理的・身体的な興奮状態を感じていなければ、物事が自分に与える影響を過小評価してしまうのです。
まさに『のど元過ぎれば熱さを忘れる』という状態です。
「視点のズレ」と対人関係
「視点のズレ」は、対人関係でも起こります。
相手の気持ちになって考えられないときがありますが、これも「視点のズレ」が原因です。
「視点のズレ」を起こし、相手の目線を想像して物事を考えることができず、自分の視点でしか物事を考えずに行動すると、対人関係がぎくしゃくしたりします。
相手と意見が合わなかったり、トラブルになるのは、「視点のズレ」が原因になっていることを理解できると良いです。
まとめ
人は、毎分毎秒、「視点のズレ」を起こしていると私は思っています。
今現在の自分の視点のみから物事を見ていたのでは、「視点のズレ」に陥り、最適解となる判断ができません。
今現在の自分の視点だけでなく、将来の自分の視点、または、他人の視点を想像して、物事を見ようとする必要があります。