刑法(威力業務妨害罪)

威力業務妨害罪(1) ~「威力業務妨害罪とは?」「保護法益・主体・客体」を説明~

 これから16回にわたり、威力業務妨害罪(刑法234条)を説明します。

威力業務妨害罪とは?

 威力業務妨害罪は、刑法234条に規定があり、

威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による

と規定されます。

 前条とは、信用毀損及び業務妨害罪(刑法233条)であり、

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する

と規定されます。

 威力業務妨害罪は、業務妨害罪のうち

威力を手段とする類型

について規定します。

威力業務妨害罪の性格・保護法益

 威力業務妨害罪は、

粗暴犯的色彩

を強く持ち、人の社会的活動の自由に対する罪としての理解が容易かつ有力ですが、犯罪の客体としての「業務」には経済的色彩の濃いものが少なくなく、その点で

財産犯としての性格

もあり、威力業務妨害罪は上記の2つの性質を併有しているものと理解すべきとされます。

 威力業務妨害罪の保護法益は、

  • 業務活動そのもの
  • 業務活動の遂行それ自体

とされます。

 結果として業務を妨害した場合には、たとえ業務活動の自由自体は阻害されなかったとしても、威力業務妨害罪が成立するとされます。

主体(犯人)

 威力業務妨害罪の主体(犯人)に制限はありません。

客体

 威力業務妨害罪の客体は、

「人の業務」

です。

 「人の業務」とは、個人又は法人が、

職業その他社会生活上の地位に基づき、継続して行う事務又は事業

をいいます。

 業務の定義に言及した判例として、以下のものがあります。

大審院判決(大正10年10月24日)

 裁判所は、

  • 刑法第233条にいわゆる業務は、公務を除くほか、精神的なると経済的なるとを問わず、あまねく職業そのほか継続して従事することを要すべき事務又は事業を総称するものとす

と判示しました。

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