前回の記事の続きです。
「威力」(威力業務妨害罪)と「偽計」(偽計業務妨害罪)の区別
「威力」も「偽計」も人の自由意思を害する点において共通しており、両者の区別をどこに求めるかは困難な問題となっています。
「威力」と「偽計」を区別しなければ、威力業務妨害罪(刑法234条)が成立するのか、偽計業務妨害罪(刑法233条)が成立するのかを判断できません。
威力業務妨害罪と偽計業務妨害罪のどちらが成立するのかの限界事例においては、
相手方(業務主又はそれ以外の第三者)の面前に業務主の業務遂行に対する障害となり得るもの(加害者の「行為そのもの」である場合もあれば「その行為の結果」であることもある)を提示して、その自由意思を制圧しにかかるという関係が認められる場合が威力業務妨害
であり、
相手方にそのような障害の存在事実をことさらに秘匿し、その不知錯誤に乗ずる(その発覚が同時に業務の阻害をもたらす)という関係の下に組み立てられたのが偽計業務妨害
というべきと解されます。
例えば、限界事例(一つの妨害手段の中に威力の色彩と偽計の色彩が混在している場合)として、
- 内容虚偽の爆破予告電話
- 食品等への毒物混入通告
- にせ爆弾の設置
が挙げられます。
これらの場合にはトリックが弄されてはいますが、それ自体が脅迫行為を形成し、その威嚇によって人心が圧迫を受け業務遂行が阻害されるという関係にあるため、威力業務妨害と目すべきと考えられます。