刑法(威力業務妨害罪)

威力業務妨害罪(13) ~「威力業務妨害罪の故意」を説明~

 前回の記事の続きです。

威力業務妨害罪の故意

 威力業務妨害罪(刑法234条)は故意犯です(故意についての詳しい説明は前の記事参照)。

 威力業務妨害罪の故意は、

人の意思を制圧するに足りる勢力を行使して人の業務を妨害する結果を発生させるおそれのある行為をすることの認識・認容

とされます。

 「威力を用いて人の業務を妨害した」ことが威力業務妨害罪の構成要件該当行為であるところ、判例によれば、

  • 「威力」とは、「人の意思を制圧するに足りる勢力」であり
  • 「妨害した」とは、「業務妨害の結果を発生させるおそれのある行為(業務を妨害するに足る行為)をした」こと

をいうので(大審院判決 昭和11年5月7日、最高裁判決 昭和28年1月30日)、これを前提とすると、威力業務妨害罪の構成要件的故意は、上記のとおりとなります。

 東京高裁判決(平成20年5月19日)は、

「威力業務妨害罪の故意としては、威力を用いる認識と、その結果、人の業務を妨害するおそれのある状態が生じることの認識があれば足りる

としています。

 まず前提として、構成要件の客観面において、業務妨害の結果を発生させるおそれのある行為をするだけでは足りず、そのおそれのある状態を生じさせることを要件としているものと解されます。

 そのため、故意においても、それが反映されて、「行為をすることの認識」にとどまらず、さらに「行為した結果、それによって業務妨害のおそれのある状態が生じることの認識・認容」までが必要とされます。

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