刑法(保護責任者遺棄罪)

保護責任者遺棄罪(2) ~客体①「老年者、幼年者、身体障害者又は病者」「扶助を必要とする者」を説明~

 前回の記事の続きです。

保護責任者遺棄罪の客体(被害者)

 保護責任者遺棄罪の条文である刑法218条は、

老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する

と規定します。

 保護責任者遺棄罪の客体(被害者)は、この条文中にある

老年者、幼年者、身体障害者又は病者

です。

 遺棄罪(刑法217条)の客体である「老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者」と文言は異なっていますが、その意義は同じであると解されています。

 保護責任者遺棄罪においても、遺棄罪(刑法217条)と同様に、

扶助を必要とする者

が要件になります。

 「老年者、幼年者、身体障害者又は病者」の列挙は制限的な列挙であり、それ以外の者はたとえ扶助を要すべき危険な状態にあっても保護責任者遺棄罪の客体となりません。

「扶助を必要とする者」とは?

 「扶助を必要とする者」につき、大審院判決(大正4年5月21日)は、保護責任者遺棄罪を生命・身体に対する危険犯とした上で、

「老幼、不具又は疾病によりて精神上若しくは身体上の欠陥を生じ、他人の扶助助力を待つに非ざれば自ら日常生活を営むべき動作を為す能わざる者」

と述べ、「扶助を必要とする者」とは、

他人の助けを借りなければ自分では日常生活を営む上に必要な動作をなし得ない者

と解しています。

遺棄罪の客体の説明も参照ください

 保護責任者遺棄罪の客体の説明は、遺棄罪の客体の説明が当てはまりますので、以下の記事も参照ください。

遺棄罪(2) ~客体①「老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者」を説明~

遺棄罪(3) ~客体②「客体(被害者)である『老年、幼年』『身体障害』とは?」を説明~

遺棄罪(4) ~客体③「客体(被害者)である『疾病』とは?」を説明~

遺棄罪(5) ~客体④「客体(被害者)の要件である『扶助を必要とする者』とは?」を説明~

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