学習

【権威者と服従者】責任はすべて権威者にあり、自分には責任がない

 私たちは、権威者からの命令にいとも簡単に従います。

 2020年3月は、コロナウィルスの流行で外出自粛ムードになっていましたが、会社の上司に「送別会をするぞ」と誘われて飲み会に参加してしまった人もいたのではないでしょうか(私は参加しました)。

 なぜ私たちは、権威者からの命令に簡単に従うのでしょうか。

服従者は自分には責任がないと考える

 人は、しかるべき権威者から命令された場合、その行為の内容にかかわりなく、命じられたとおりのことを行います。

 歴史的には、ナチスドイツによるユダヤ人の大量虐殺や戦争がよい例です。

 権威者から命令されれば、服従者は多くの人を殺すことだってできるのです。

 なぜなのでしょうか?

 それは、権威者から命令されることで、服従者の頭の中で「この行動をしても自分には責任がない」という思考調整が入るためです。

 服従者の思考は、

  • 責任と主導権のすべては権威者にある
  • 自分は道徳的に責任のある行動をとるべき人間ではなく、単なる権威者の代行人だ

となります。

 権威者からの命令により、服従者は「自分には責任がない」という心理になるため、良心が痛むことや自分を責める必要がなくなり、もはや思考停止状態で権威者の指示どおりに動けるようになるのです。

 大量虐殺だってできてしまいます。

 「何か問題が起こっても自分の責任じゃないからいいか」と考えて、自分が他人から責められるかもしれないという不安と葛藤しなくなるので、精神を消耗せずに行動を実行できるのです。

仕事

 「責任はすべて権威者にあり、自分には責任がない」と考える心理メカニズムは、仕事でも起こります。

 2020年は、かんぽ生命保険の不正販売問題がありました。

 2020年3月時点で不正販売が2206件あったと発表されています。

 不正行為だと分かっていても、上司の命令または黙認があれば、部下には「責任はすべて権威者にあり、自分には責任がない」という思考調整が入るため、部下は不正行為をいとも簡単に実行することができ、2206件という膨大な不正販売件数となったと考えることができます。

 上司が道徳に反する指示をしてきた場合、良くないことと分かっていても「上司の指示だから仕方ないか。上司にたてついて険悪な関係になりたくないしな…」と考えて、その指示に従った経験がある人は多いと思います。

追記

指示をしない上司

 私の会社には、指示をすべき場面で指示を出さない上司が結構います。

 これは、明確な指示を出すことで、自分への責任が明確化することを恐れるためです。

 「部下が勝手にやった」という言い訳ができないわけです。

 指示を出すべき時に指示を出せない上司がよく言う言葉は「部下の成長のために、部下に考えさせる」です。

 上司の中には、部下に明確な指示を出すことで、部下に「責任はすべて上司にあり、自分には責任がない」という考え方をされたくない人が相当数いるのです。

 ちなみに、上司と部下の関係の原則は以下のとおりです。

上司

  • 部下に指示を出す
  • 現場で手を汚して泥にまみれないかわりに責任をとる
  • 指示を出すという知的労働であり、責任をとる役割であるため、給料が高い

部下

  • 上司の指示に従う
  • 現場で手を汚して泥にまみれるかわりに責任はとらない
  • 上司の指示どおりに動くという単純労働であり、責任をとらないため、給料が安い

 ‶ 部下に指示をださない、現場で手を汚さない、責任をとろうとしない、でも給料は高い ″といった上司は本来存在してはいけません。