主体(犯人)
強盗・強制性交等及び同致死罪(刑法241条)の主体(犯人)は、
- 強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者(刑法241条1項前段)
又は
- 強制性交等の罪若しくはその未遂罪を犯した者(刑法241条1項後段)
です。
「強盗の罪」には、刑法236条の強盗犯人のほか、事後強盗罪(刑法238条)、昏酔強盗罪(刑法239条)の犯人も含まれます。
強盗は未遂でも、強盗・強制性交等及び同致死罪の犯人となる
ここでいう強盗犯人に該当するためには、強盗の故意をもって強盗の実行に着手していればよく、強盗は未遂でもよいとされます。
参考となる判例として、以下のものがあります。
この判例は、強盗犯人が、財物を窃取した後、家人たる婦女に発見され、逮捕を免れるために、 これを縛りあげた後、強姦の意思を生じ、同女を強姦した場合には、強姦前に、盗品を元の場所に戻しておいたとしても、刑法241条(平成29年改正前)の罪の成立を妨げないとしました。
女性も強盗・強制性交等及び同致死罪の犯人になる
強盗・強制性交等及び同致死罪の主体(犯人)は、男性に限定されず、女子も犯人になります。
これは、強制性交等罪(刑法177条)において、女性が加害者となって男性に強性性交等を行った場合においても、強制性交等罪が成立するという考え方と同じです。
なお、平成29年改正前の刑法241の判例でも、女子も、男子と共謀して、強姦(強制性交)の犯罪行為に加功すれば、強姦罪(強制性交等罪)の共同正犯となるとされています(最高裁決定 昭和40年3月30日)。
客体(被害者)
強盗・強制性交等及び同致死罪の客体(被害者)は、女子に限らず、男性でも客体になります。
また、被害者の年齢も問いません。
強盗・強制性交等罪の記事まとめ(全4回)
強盗・強制性交等罪(1) ~「強盗・強制性交等及び同致死罪とは?」「『強制性交等』とは、膣性交・肛門性交・口腔性交を指す」「強盗と強制性交の前後は問わない」を判例で解説~
強盗・強制性交等罪(2) ~「主体・客体」「強盗が未遂でも本罪が成立する」「犯人・被害者に男女の限定はない」を判例で解説~
強盗・強制性交等罪(3) ~「未遂罪」「共犯」を判例で解説~
強盗・強制性交等罪(4) ~罪数「強盗・強制性交等及び同致死罪は、被害者の数に応じた個数が成立する」「被害者を死傷させた場合は、強盗・強制性交等罪、又は強盗・強制性交等致死罪の一罪のみが成立する」を判例で解説~