刑法(強盗・強制性交等罪)

強盗・強制性交等罪(2) ~「主体・客体」「強盗が未遂でも本罪が成立する」「犯人・被害者に男女の限定はない」を判例で解説~

主体(犯人)

 強盗・強制性交等及び同致死罪(刑法241条)の主体(犯人)は、

  • 強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者(刑法241条1項前段)

又は

  • 強制性交等の罪若しくはその未遂罪を犯した者(刑法241条1項後段)

です。

 「強盗の罪」には、刑法236条の強盗犯人のほか、事後強盗罪刑法238条)、昏酔強盗罪刑法239条)の犯人も含まれます。

強盗は未遂でも、強盗・強制性交等及び同致死罪の犯人となる

 ここでいう強盗犯人に該当するためには、強盗の故意をもって強盗の実行に着手していればよく、強盗は未遂でもよいとされます。

 参考となる判例として、以下のものがあります。

最高裁判決(昭和30年12月23日)

 この判例は、強盗犯人が、財物を窃取した後、家人たる婦女に発見され、逮捕を免れるために、 これを縛りあげた後、強姦の意思を生じ、同女を強姦した場合には、強姦前に、盗品を元の場所に戻しておいたとしても、刑法241条(平成29年改正前)の罪の成立を妨げないとしました。

女性も強盗・強制性交等及び同致死罪の犯人になる

 強盗・強制性交等及び同致死罪の主体(犯人)は、男性に限定されず、女子も犯人になります。

 これは、強制性交等罪(刑法177条)において、女性が加害者となって男性に強性性交等を行った場合においても、強制性交等罪が成立するという考え方と同じです。

 なお、平成29年改正前の刑法241の判例でも、女子も、男子と共謀して、強姦(強制性交)の犯罪行為に加功すれば、強姦罪(強制性交等罪)の共同正犯となるとされています(最高裁決定 昭和40年3月30日)。

客体(被害者)

 強盗・強制性交等及び同致死罪の客体(被害者)は、女子に限らず、男性でも客体になります。

 また、被害者の年齢も問いません。

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強盗・強制性交等罪の記事まとめ(全4回)

強盗・強制性交等罪(1) ~「強盗・強制性交等及び同致死罪とは?」「『強制性交等』とは、膣性交・肛門性交・口腔性交を指す」「強盗と強制性交の前後は問わない」を判例で解説~

強盗・強制性交等罪(2) ~「主体・客体」「強盗が未遂でも本罪が成立する」「犯人・被害者に男女の限定はない」を判例で解説~

強盗・強制性交等罪(3) ~「未遂罪」「共犯」を判例で解説~

強盗・強制性交等罪(4) ~罪数「強盗・強制性交等及び同致死罪は、被害者の数に応じた個数が成立する」「被害者を死傷させた場合は、強盗・強制性交等罪、又は強盗・強制性交等致死罪の一罪のみが成立する」を判例で解説~