性的姿態撮影等処罰法

性的姿態等撮影罪(7)~「他罪との罪数関係」を説明

 前回の記事の続きです。

 この記事では、性的姿態等撮影罪(性的姿態撮影等処罰法2条)と

  1. 性的影像記録保管罪(4条
  2. 不同意わいせつ罪
  3. 児童ポルノ禁止法違反(児童ポルノ製造罪)
  4. 都道府県の迷惑防止条例違反(盗撮)

の罪数関係を説明します。

① 性的姿態等撮影罪(2条1項)と性的影像記録保管罪(4条)との関係

 性的姿態等撮影罪(2条1項)と性的影像記録保管罪(4条

 性的影像記録保管罪(4条)は、提供又は公然陳列の目的で性的影像記録を保管する行為を処罰するものです。

 性的姿態等撮影罪(2条1項)をした者が、これにより生成された性的影像記録を提供目的や公然陳列目的で保管した場合は、新たな法益侵害が生じることから、性的姿態等撮影罪と性的影像記録保管罪の両罪が成立します。

 そして、性的姿態等撮影罪と性的影像記録保管罪とは併合罪になると解されています。

 なお、性的姿態等撮影罪と性的影像記録保管罪の行為は、法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで、行為者の動態が社会的見解上一個のものとは評価し得ないことから、観念的競合とはなりません(最高裁判決 昭和49年5月29日)。

 また、罪質上、性的姿態等撮影罪が性的影像記録保管罪の手段又は結果となるという関係にあるとはいえないことから、牽連犯にもならないとされます(最高裁判決 昭和57年3月16日)。

② 不同意わいせつ罪との関係

 被害者に対し、被害者に同意する意思がないのに被害者自身の性器や乳房を露出した姿態をとらせてそれを自撮りさせるなどして撮影させた場合、不同意わいせつ罪刑法176条)が成立する場合があります。

 性的姿態等撮影罪に当たる撮影行為が行われ、その撮影行為が不同意わいせつ罪にも当たる場合に、性的姿態等撮影罪と不同意わいせつ罪の罪数の考え方は、

  • 法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価されるのであれば、性的姿態等撮影罪と不同意わいせつ罪は観念的競合となり、一罪となる
  • そのように評価されなければ、性的姿態等撮影罪と不同意わいせつ罪は併合罪となる

となります。

③ 児童ポルノ禁止法違反(児童ポルノ製造罪)との関係

 性的姿態等撮影罪に当たる撮影行為が行われ、その撮影行為が児童ポルノ禁止法違反(児童ポルノ製造罪、同法7条3~5項)にも当たる場合、性的姿態等撮影罪の保護法益は児童ポルノ製造罪の保護法益とは異なることから、性的姿態等撮影罪と児童ポルノ製造罪の両罪が成立します。

 そしてこの場合の性的姿態等撮影罪と児童ポルノ製造罪の罪数の考え方は、

  • 法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価されるのであれば、性的姿態等撮影罪と児童ポルノ製造罪は観念的競合となり、一罪となる
  • そのように評価されなければ、性的姿態等撮影罪と児童ポルノ製造罪は併合罪となる

となります。

 なお、性的姿態等撮影罪の保護法益は、

  • 自己の性的な姿態を他人に見られないという性的自由・性的自己決定権

です。

 児童ポルノ製造罪の保護法益は、様々な見解があり、

  1. 児童ポルノの被写体とされた児童個人の利益(個人的法益説)
  2. 将来の被害児童の保護(一般児童保護説)
  3. 児童一般の健全な生育のために良好な社会環境を維持すること(社会的法益説)
  4. 児童の個人的法益と社会的法益(混合説)

が挙げられます。

④ 都道府県の迷惑防止条例違反(盗撮)との関係

 性的姿態等撮影罪に当たる撮影行為が行われ、その撮影行為が都道府県の迷惑防止条例違反(盗撮)にも当たる場合の罪数関係を説明します。

 この場合、性的姿態等撮影罪の保護法益(自己の性的な姿態を他人に見られないという性的自由・性的自己決定権)は、都道府県の迷惑防止条例違反(盗撮)の保護法益(各都道府県における生活の平穏)とは異なることから、性的姿態等撮影罪と都道府県の迷惑防止条例違反(盗撮)の両罪が成立します。

 そしてこの場合の性的姿態等撮影罪と都道府県の迷惑防止条例違反(盗撮)の罪数の考え方は、

  • 法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価されるのであれば、性的姿態等撮影罪と都道府県の迷惑防止条例違反(盗撮)は観念的競合となり、一罪となる
  • そのように評価されなければ、性的姿態等撮影罪と都道府県の迷惑防止条例違反(盗撮)は併合罪となる

となります。

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