前回の記事の続きです。
この記事では、性的影像記録提供等罪(性的姿態撮影等処罰法3条)の罪数の考え方を説明します。
同一の撮影対象者(被害者)に係る性的影像記録を異なる複数の機会に提供された場合の性的影像記録提供等罪の罪数の考え方
同一の撮影対象者(被害者)に係る性的影像記録を異なる複数の機会に提供する行為が行われた場合、いずれの提供行為についても性的影像記録提供等罪が成立すると考えられています。
例えば、
- 被害者Aの性的影像記録を、B、C、DにSNSのLINEで送信して受信させた場合、3つの性的影像記録提供等罪が成立する
と考えられています。
このように考えられるのは、B、C、Dに対する提供行為ごとに新たな法益侵害(被害者の性的な姿態が他の機会に他人に見られる危険)が生じるためです。
罪数の考え方
この場合の例における3つの性的影像記録提供等罪の罪数の考え方以下のとおりです。
1⃣ 併合罪の関係に立つと評価される場合
法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価(最高裁判決 昭和49年5月29日)し得ないことから、観念的競合ではなく、併合罪の関係に立つ
と考えられています。
2⃣ 包括一罪の関係に立つと評価される場合
ただし、同一人に対し同一の撮影対象者(被害者)に係る性的影像記録を異なる機会に提供する行為を行った場合でも、
- 犯意が単一である
- 各提供行為が時間的に連続性している
- 提供方法が同一である
といった事情があれば、併合罪ではなく、包括一罪と評価される場合もあるとされます。
3⃣ 撮影対象者(被害者)を異にする性的影像記録を同一の機会に提供した場合の罪数の考え方
撮影対象者(被害者)を異にする性的影像記録(例えば、被害者A、B、Cの性的影像)を 、同一の機会に提供した場合(例えば、被害者A、B、Cの性的影像をSNSのLINEで他の者に一括送信して受信させた場合)は、被害者の数に応じた数の性的影像記録提供等罪が成立すると考えられています。
つまり、この場合は、被害者A、B、Cの数分の3つの性的影像記録提供等罪が成立することとなります。
これは、提供の機会としては同一であっても、その提供行為により撮影対象者(被害者)それぞれについて法益侵害が生じることから、各別に性的影像記録提供等罪が成立すると考えられるものです。
そして、この場合の罪数の考え方は、
- 法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価されるのであれば、3つの性的影像記録提供等罪は観念的競合となり、一罪となる
- そのように評価されなければ、3つの性的影像記録提供等罪は併合罪となる
とされます。