性的姿態撮影等処罰法

性的姿態等影像送信罪(4)~「他罪との罪数関係」を説明

 前回の記事の続きです。

 この記事では、性的姿態等影像送信罪(性的姿態撮影等処罰法5条)と

  1. 不同意わいせつ罪
  2. 都道府県の迷惑防止条例違反(盗撮)

の罪数関係を説明します。

① 不同意わいせつ罪との関係

 被害者に対し、被害者に同意する意思がないのに被害者自身の性器や乳房を露出した姿態をとらせてそれを自撮りさせるなどして撮影させた場合、不同意わいせつ罪(刑法176条)が成立する場合があります。

 性的姿態等影像送信罪に当たる影像送信行為が行われ、その影像送信行為が不同意わいせつ罪にも当たる場合に、性的姿態等影像送信罪と不同意わいせつ罪の罪数の考え方は、

  • 法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価されるのであれば、性的姿態等影像送信罪と不同意わいせつ罪は観念的競合となり、一罪となる
  • そのように評価されなければ、性的姿態等影像送信罪と不同意わいせつ罪は併合罪となる

となります。

② 都道府県の迷惑防止条例違反(盗撮)との関係

 性的姿態等影像送信罪に当たる影像送信行為が行われ、その影像送信行為が都道府県の迷惑防止条例違反(盗撮)にも当たる場合の罪数関係を説明します。

 この場合、性的姿態等影像送信罪の保護法益(自己の性的な姿態を他人に見られないという性的自由・性的自己決定権)は、都道府県の迷惑防止条例違反(盗撮)の保護法益(各都道府県における生活の平穏)とは異なることから、性的姿態等影像送信罪と都道府県の迷惑防止条例違反(盗撮)の両罪が成立します。

 そしてこの場合の性的姿態等影像送信罪と都道府県の迷惑防止条例違反(盗撮)の罪数の考え方は、

  • 法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価されるのであれば、性的姿態等影像送信罪と都道府県の迷惑防止条例違反(盗撮)は観念的競合となり、一罪となる
  • そのように評価されなければ、性的姿態等影像送信罪と都道府県の迷惑防止条例違反(盗撮)は併合罪となる

となります。

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