ストーカー規制法

ストーカー規制法(10)~2条1項7号の「その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと」を説明

 前回の記事の続きです。

2条1項7号の「その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと」とは?

 ストーカー規制法2条1項7号は、ストーカー行為として、

  • その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと

と規定します。

 例えば、

  • 被害者のスマートフォンに「お前は貞操観念のないヤリマン女だ」などとメッセージ送信する行為
  • 被害者がよく閲覧するブログのコメント欄に「〇〇(被害者の名前)は不倫の常習者」などの被害者を誹謗中傷する言葉を書き込む行為

が挙げられます。

「名誉を害する事項」とは?

 「名誉を害する事項」とは、

  • 相手方(被害者、被害者の密接関係者)の社会的評価を害し、名誉感情を害する事柄を告げること

をいいます。

 相手方の社会的評価を害し、名誉感情を害する事柄を告げるなどすれば足り、名誉毀損罪(刑法230条)の「事実の摘示」(他人の名誉が毀損されるものと認められる程度に為さるれること)までのものは要しないと解されています。

※ 名誉毀損罪の「事実の摘示」の説明は名誉毀損罪(5)の記事参照

「その名誉」とは?

 「その名誉」は、

  • 被害者に関する名誉であれば「被害者の名誉」
  • 密接関係者(被害者の配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者)に関する名誉であれば「密接関係者の名誉」

となります。

「…告げ、又はその知り得る状態に置くこと」とは?

 「(その名誉を害する事項を)告げ、又はその知り得る状態に置くこと」は、

  • 公然と行われることは要件ではないこと

がポイントであり、相手方(被害者、密接関係者)に告げられ、又は相手方が知り得る状態にあれば足ります。

 名誉毀損罪(刑法230条)、侮辱罪(刑法231条)は、名誉毀損や侮辱行為が公然と行われることを要件としており、この点に名誉毀損罪、侮辱罪との違いがあります。

※ 名誉毀損罪の公然性の説明は名誉毀損罪(3) の記事参照

※ 侮辱罪の公然性の説明は侮辱罪(2)の記事参照

その知り得る状態に置く」とは?

 2条1項7号の「その知り得る状態に置く」は、

2条1項2号の「その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと」の「その知り得る状態に置く」と同じ意味

です。

 「その知り得る状態に置く」とは、

  • 直接相手方(被害者、密接関係者)に伝達するものではないものの、相手方が日常生活において了知し得る範囲内に到達させること

をいいます。

 行為の相手方が知り得た状態に置いたと認定するためには、

  • 行為が相手方に対して行われたものであること

    かつ

  • 相手方が了知し得る状態であったこと

が必要になります。

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