ストーカー規制法

ストーカー規制法(11)~2条1項8号の「性的羞恥心を害する事項を告げる、文書を送付する、電磁的記録を送信する」を説明

 前回の記事の続きです。

2条1項8号の「性的羞恥心を害する事項を告げる、文書を送付する、電磁的記録を送信する」とは?

 ストーカー規制法2条1項8号は、ストーカー行為として、

  • その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと

と規定します。

 2条1項8号の行為は、例えば、

  • 被害者に対し、電話や手紙で卑わいな言葉を告げる行為
  • 被害者宅に性具を送付する行為
  • 被害者の裸の画像を被害者のスマートフォンに送信する行為
  • 被害者が頻繁に閲覧するインターネット掲示板に被害者の下着姿の画像をアップロードして投稿する行為

が挙げられます。

「その性的羞恥心」とは?

1⃣ 「その性的羞恥心」は、

  • 2条1項8号の行為が「被害者」に対するものであれば「被害者の性的羞恥心の性的羞恥心」
  • 2条1項8号の行為が「密接関係者」(被害者の配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者)に対するものであれば「密接関係者の性的羞恥心」

という意味になります。

 つまり、2条1項8号の行為は、

  • 被害者

    又は

  • 密接関係者

の性的羞恥心を害するものであることを要します。

2⃣ 性的羞恥心を害するものであるかの認定は、

  • 客観的な事情

のほか、

  • 性的羞恥心を感じ方は個人差があることから、被害者・密接関係者の性別、年齢、属性などの事情

も考慮されて判断されるとされます。

「性的羞恥心を害する」とは?

 「性的羞恥心を害する」とは、

  • 望んでもいないのに性的に恥ずかしいと思う気持ちを起こさせて精神の平穏を害すること

をいい、

  • 刑法にいう「わいせつ」にまで至らないものも含まれる

と解されています。

 一般的には性的羞恥心を害するものと評価できないが、行為の相手方(被害者、密接関係者)に対しては性的羞恥心を害するものであれば対象となります。

 例えば、

  • 首から下のみが写っただれか分からない裸の画像でも、被害者が見れば「これは自分だ」と分かる画像

は、被害者の性的羞恥心を害するものに当たるので対象となります。

「その性的羞恥心を害する電磁的記録に係る記録媒体」とは?

 「電磁的記録に係る記録媒体」には、

  • 画像や動画が記録されたUSBメモリ、CD-R、パソコンのハートディスク

などが該当します。

 「その性的羞恥心を害する電磁的記録に係る記録媒体」には、

  • 被害者・密接関係人の性的羞恥心を害する画像や動画を記録したCD-R

などが該当します。

「その性的羞恥心を害する電磁的記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと」とは?

 「その性的羞恥心を害する電磁的記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと」には、

  • 被害者・密接関係人の性的羞恥心を害する画像や動画を電子メールで送信すること
  • 被害者・密接関係人の性的羞恥心を害する画像や動画をインターネット上に掲載すること

などが該当します。

その知り得る状態に置く」とは?

 「その知り得る状態に置く」とは、

  • 被害者、密接関係者に伝達するものではないものの、被害者、密接関係者が日常生活において了知し得る範囲内に到達させること

をいいます。

 被害者、密接関係者が知り得た状態に置いたと認定するためには、

  • 被害者、密接関係者に対して行われたものであること

    かつ

  • 被害者、密接関係者が了知し得る状態であったこと

が必要になります。

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