法律(刑法)

盗品等に関する罪⑦ 『盗品等保管罪』を判例で解説 ~「保管の定義」「成立要件」「要物性(現実の物の引き渡しを要する)」「盗品が現金の場合、両替によって同一性は失われない」「保管後に盗品等であることを知った場合」「継続犯」~

 盗品等に関する罪(刑法256条)の行為は、

刑法256条1項の

刑法256条2項の

の5種類と定められています。

※( )内は、平成7年改正前の旧刑法の罪名の呼び方です。

 今回の記事では、保管(盗品等保管罪)について解説します。

盗品等保管罪を解説

保管の定義

 盗品等保管罪における保管とは、

委託を受けて本犯(窃盗等の犯人)のために贓品(盗品等)を保管することをいう

と判例で定義されています(最高裁判決 昭和34年7月3日)。

盗品等保管罪の成立要件

 盗品等保管罪は、

 知情と保管

の行為があれば成立します(大審院判決 明治39年3月29日)。

 保管は、有償・無償を問いません。

 保管の方法として、

  • 質物として取得する場合(大審院判例 明治45年4月8日)
  • 貸金の担保として受け取る場合(大審院判例 大正2年12月19日)
  • 情を知らない他人に保管させる間接正犯の場合(名古屋高裁判例 昭和25年3月20日)

のいずれも本罪が成立します。

 なお、直接の委託者が、本犯(窃盗等の犯人)であることを要しません。

要物性(現実の物の引き渡しを要する)

 盗品等保管罪は、保管の契約をするだけでは成立せず、現実に物の引渡しを受けて保管することが必要です。

 この点について、以下の判例があります。

京都地裁判例 昭和45年3月12日

 この判例で、裁判官は、

  • 刑法256条2項の贓物寄蔵罪(盗品等保管罪)が成立するためには、「故意」として、被告人が贓物を預かる旨の意思を有していることが必要であるほか、「実行行為ないしは結果」として、被告人が贓物を現実に預かったこと、すなわち贓物に対する占有が被告人の支配下に移転されたことが必要である
  • 被告人が単に贓物を預かる旨の意思表示や約束をしたにとどまるという如き場合にあっては、未だ贓物寄蔵罪(盗品等保管罪)の成立はないものといわなければならない

と判示しました。

 ちなみに、盗品等保管罪の成立には、現実の物の引き渡しが必要なので、盗品が現金の場合、現金を口座に振り込んで送金する方法では、盗品等保管罪は成立しないと考えられます。

 現金の場合で、盗品等保管罪が成立するには、現金の引き渡しが必要になると考えられます。

保管する盗品が現金の場合、両替や預金によって同一性は失われない

 盗品である現金の保管については、両替や預金などによって、同一性を失わないとするのが判例の考え方です。

 判例は、盗品である現金を両替・種類変更しても、盗品の性格を失わないとしており、盗品等保管罪についても、この判例の考え方が採用されると考えられます。

大審院判決(大正2年3月25日)

 この判例は、 押収物の被害者還付に関する判例ですが、

  • 横領した紙幣の両替金について、両替しても通貨である点は異ならない

として盗品等該当性を認めています。

大審院判例(大正11年4月18日)

 この判例は、横領金に関して、

  • 金銭を横領して、自己の取引の証拠金に供し、取引後にその返還を受けた場合には、その金銭の盗品等該当性は失われない

としています。

 盗品が現金の場合には、現金の現物自体にさしたる意味がなく、現金の具有する価値だけが問題で、代替性自体現金個有のものとみられる関係から、現金の両替や種類変更は、盗品等としての性格に影響を与えないという考え方がとられます。

保管後に盗品等であることを知った場合

 保管者が、保管後に盗品等であることを知った場合で、そのまま本犯(窃盗等の犯人)のために保管することにした場合は、盗品であることを知った時から盗品等保管罪が成立します。

 この点について、以下の判例があります。

最高裁決定(昭和50年6月12日)

 この判例で、裁判官は、

  • 贓物(盗品等)であることを知らずに物品の保管を開始した後、贓物であることを知るに至つたのに、なおも本犯のためにその保管を継続するときは、贓物の寄蔵(保管)にあたるものというべきである

と判示しました。

 保管者が、保管後に盗品等であることを知り、警察に届け出たり、盗品の所有者に連絡するなどの行為があれば、盗品等保管罪は成立しないことになります。

継続犯

 盗品等保管罪は、保管という性質上、継続犯です。

盗品等に関する罪①~⑬の記事まとめ一覧

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