前回の記事の続きです。

常習累犯窃盗罪(3条)の成立要件(常習性の要件)

 常習累犯窃盗罪(3条)は、常習として窃盗罪等(窃盗罪・強盗罪・事後強盗罪・昏睡強盗罪、これらの未遂罪)を犯した犯人に、窃盗等の実刑前科がある場合に、刑を加重し、その犯人を通常の窃盗罪よりも重く処罰するものです。

 窃盗を繰り返す犯人の危険性に着目し、より重く処罰するという目的があります.

 常習累犯窃盗罪の成立が認められるためには、

  1. 常習性の要件
  2. 前科の要件

の2つを満たす必要があります。

 例えば、「②前科の要件」はあるが、「①常習性の要件」が認められない場合は、常習累犯窃盗罪は成立しません。

 この記事では、「①常習性の要件」にについて説明します。

① 常習性の要件

常習性とは?

 常習累犯窃盗罪の常習性とは、反復して窃盗を行う犯人の性癖をいいます。

 この常習性の認定は、犯人の前科・前歴・性格・素行・犯行の動機・態様・回数・間隔等を総合してなされます。

 常習性の認知に当たり、今回犯した窃盗行為の態様と、犯人の窃盗前科の存在を総合して認定しても差し支えないとされます(最高裁判例 昭和33年7月11日)。

 また、犯行手口が特殊な熟練性を要するものであることは必要ではないし、前科にかかる犯行と今回の犯行との間で、犯行手口の同一性、類似性があることは常習性認定の一要素となり得ます(広島高裁判例 平成10年3月19日)。

 とはいうものの、犯行手口の同一性、類似性が、常習性認定の必須要素というわけではありません。

 この点を判示したのが以下の裁判例です。

東京高裁判例(平成10年10月12日)

 裁判所は、

  • 窃盗の常習性は、窃盗を反復累行する習癖の問題であって、手口の熟練性や同一性、類似性までをも必要とするものではない

と判示しています。

 ちなみに、犯行動機、態様が、窃盗前科のものとは著しく異なるとして、常習性を否定し単純窃盗罪の成立を認めた以下の判例があります。

東京高裁判例(平成5年11月30日)

 裁判所は、

  • 被告人には、前科(10年以内に3回以上6月の懲役以上の刑の執行を受けた前科)があるので、その点では、盗犯等の防止及び処分に関する法律3条所定の処罰歴の要件を備えているということができる
  • しかしながら、同条の罪が成立するためには、常習性のあること、すなわち本件が窃盗の習癖の発現としてなされたものであることが必要である
  • 本件は、スーパーマーケットで買い物をした折に缶詰2缶を万引きした事案であって、他に万引の事犯は全く行われず、多数ある窃盗前科も、その犯行がアパートでの侵入盗などで本件とはその動機、態様を著しく異にし、結局本件が窃盗の習癖の発現としてなされたもので常習性があるとは認められない

と判示し、これまでの窃盗前科における窃盗の犯行態様と、今回の窃盗の犯行態様が異なり、常習性が認められないとして、常習累犯窃盗罪は成立せず、窃盗罪が成立するとしました。

常習性の判断の見解

 常習性の判断に当たっては、

  1. 手口や態様の類似性を欠く場合には常習性を否定すべきだとする見解(①説)
  2. 反復して窃盗や強盗を行う習癖があれば足り、手口や態様の類似性は不要であるとする見解(②説)

とがあります。

 ①説の論拠としては、

  • 窃盗や強盗の常習者は一定の手口・態様で犯行を行うのが通常であり、習癖という以上は手口や態様の類似性が必要であること
  • 異なる手口・態様での犯行は偶発的色彩が強くなりがちであり、習癖の発現としての犯行とは言い難いこと

が挙げられています。

 ②説の論拠としては、

  • 盗犯等防止法3条が常習累犯窃盗の常習性の判断について特段の制限をしていないこと
  • 手口・態様の類似性といっても相対的なものであり、窃盗や強盗の常習者には現場の状況などによって手口・態様を変える者も少なくないのであるから、手口・態様の類似性を要件とするのは妥当ではないこと

が挙げられています。

 裁判例がどの見解に立っているかは、個別の事件ごとに異なります。

①説に立つと思われる裁判例

東京高裁判決(平成5年11月30日)

 盗犯の動機、態様が前科のそれとは著しく異にするとして、常習累犯窃盗罪の罪の成立を認めた原判決を破棄し、単純窃盗罪を認定した事例です。

 弁護人は、

  • 原判決は、被告人がその行為前10年内に3回窃盗罪あるいは常習累犯窃盜罪で6月以上の懲役刑の執行を受け、更に常習として、平成5年6月4日午後6時10分ころ、株式会社甲野ストア学芸大学店一階食料品売場において缶詰2缶を窃取したとして常習累犯窃盗罪の成立を認め、盜犯等の防止及び処分に関する法律2条、2条(刑法235条)を適用しているが、被告人には本件窃盗について常習性が認められないから、原判決には、この点で判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認及び法令適用の誤りがある

と主張しました。

 この主張に対し、裁判所は、

  • 記録を精査し、当審における事実取調の結果を併せて検討すると、被告人には右の前科があるので、その点では盗犯等の防止及び処分に関する法律3条所定の処罰歴の要件を備えているということができる
  • しかしながら、同条の罪が成立するためには、常習性のあること即ち本件が窃盗の習癖の発現としてなされたものであることが必要である
  • そこで更にこの点につき検討すると、記録によれば、本件は、被告人が株式会社甲野ストア学芸大学店一階食料品売場で食料品を買い求めて一旦店外に出た後、同棲している女性のためにカ二の缶詰を買おうと思いついて再度右食料品売場に戻り、陳列棚からカニの缶詰4缶を手にした後2缶を戻し、続いて隙を窺い残りの2缶を持っていた甲野ストアのビニール袋に素早く人れて盗取した、といういわゆる万引の事案であり、その動機につき、 被告人は、本件当時6万円位の現金を所持していたが、レジが混んでいた上缶詰の値段(1個1480円)も高いと思ったことから代金を払わずこれを盗んでしまおうと考えた旨述べており、これを覆すに足る証拠もない
  • このように本件は万引一件の事案であるが、記録を調べても、被告人が当時他に万引をやっていたことを伺わせる証拠は見当たらない
  • もっとも被告人は本件当時ドライバー2本及び軍手一双を所持していたことが認められ、被告人は、これはカーテンの取付けをするなどした時に使ったもので預金通帳など他の私物とともにセカンドバッグに人れて持ち歩いていたものであると述べているが、その点の真偽はともかくとして、このことから被告人が万引を常習としていたと認めることもできない
  • 被告人には、昭和45年以来多数の窃盗等の前科があり、古いものの内容は分らないが、原判示の昭和58年以降の窃盗及び常習累犯窃盗は、いずれも古いアパートに所携のドライバーで錠のラッチを送るなどして侵人し、すべて現金を盗んだもの(但し、現金とともにライター1個を盜んだものが一件ある。)であり、平成2年及び3年の住居侵人の前科もアパートに窃盗目的で侵入したものであって、これらはいずれも本件とは著しくその態様を異にする
  • このように、本件は、スーパーマーケットで買い物をした折りに缶詰2缶を万引した事案であって、他に万引の事犯は全く伺われず、多数ある窃盗等の前科も、その犯行がアパートでの侵入盗などで本件とはその動機、態様を著しく異にし、結局本件が窃盗の習癖の発現としてなされたもので常習性があるとは認められない

と判示し、弁護人の主張を認め、常習性が認められないので常習累犯窃盗罪は成立せず、窃盗罪が成立するとしました。

①説に立ちつつも手口・態様の類似性を緩やかに判断した裁判例

東京高裁判決(昭和50年10月13日)

 裁判所は、

  • 所論は、右窃盗の常習性を争うので、この点について案ずるに、「常習」とは所論のとおり反復して窃盗行為をする習癖をいうものであり、それは行為の属性ではなく、行為者の属性であって、同法第2条の常習性の認定についてはその資料につき何らの制限はないのであるから、所論のように、原判示第二の一、二の各窃盗と、原判示第二の(一)ないし(三)の窃盗前科との間に犯行の動機、態様、手段等に明白な相違がある場合には、前者について常習性を認定することができないものと制限的に解釈すべきではなく、問題とされているその行為自体について、その動機、態様、手段、反復累行の事実等のみによって常習性を認定することも可能であり、また、これと、その行為前10年間3回以上刑を受けた事実とを総合して、行為の常習性を認定することも可能であると解するのが相当である(最高裁判所第二小法廷昭和33年7月11日判決・刑集2553頁参照)
  • そこで、これを本件についてみると、原判決挙示の関係証拠を総合すると、原判示第二の一 二の各窃盗は、わずか15日の間に2回にわたり、止宿先の旅館の茶の間や主人夫婦の寝室に侵人し、茶ダンスや整理ダンスの中に置いてあった現金の各一部をそれぞれ抜き取り窃取したことが認められるのであって、右各行為の手口、方法、反復累行の事実に加えて、被告人は、これまで昭和41年9月20日窃盗罪により懲役1年4月に処せられて受刑したうえに、原判示第二の(一)の窃盜罪により懲役8月に、同(二)の窃盗罪により懲役2年に、同(三)の常習累犯窃盗罪により懲役3年に各処せられ、それぞれ受刑した事実が認められるから、これらを総合すると、原判示第二の一、二の各窃盗行為について被告人の窃盗の習癖の発現として、その常習性を優に認めることができるから、原判決には所論のような事実誤認又は法令適用の誤りはない

と判示しました。

広島高裁判決(平成10年3月19日)

 常習累犯窃盗罪における常習性の要件について、当該犯行と前科との間における犯行同様等の類似性は、常習性認定のための1つの要素であるとしたうえで、常習性を否定して単純窃盗罪を認定した原判決を破棄して常習累犯窃盗罪を認定した事例です。

 検察官は、

  • 原判決は、「被告人は、昭和61年8月26日広島簡易裁判所において窃盜罪等により懲役1年2月に、昭和63年3月26日広島地方裁判所において常習累犯窃盗罪等により懲役4年に、平成4年10月14日 広島地方裁判所において常習累犯窃盗罪等により懲役3年6月に各処せられ、いずれもそのころ各刑の執行を受けたものであるが、更に常習として、平成8年4月23日午後4時35分ころ、広島市中区《番地略》株式会社 甲野甲野クラン広島において、同店店長D管理に係る紳士スエード靴2足ほか3点(販売価格合計7万6500円) を窃取したものである。」との常習累犯窃盗罪の公訴事実に対し、常習性を否定し、単純窃盗罪を認定しているが、被告人は多数の窃盗等の前科があり、本件と窃盗の前科における犯行の手口、態様、窃盗物品の類似性を考慮すれば、被告人には、反復して窃盗行為をなす習癖、すなわち常習性があり、本件が常習累犯窃盗罪に該当することは明らかであるから、原判決は、常習性に関する事実を誤認し、それが判決に影響を及ぼすことは明らかである

と原判決が常習累犯窃盗罪の成立を認めない判断をしたことは間違ってると主張しました。

 この主張に対し、裁判所は、

  • 原審記録を調査し、当審における事実取調べの結果を併せて検討するに、被告人は、本件犯行前10年間に窃盗罪等で三回六か月以上の懲役刑の執行を受けたほか、他に多数の窃盗等の前科を有すること、本件犯行と前科における窃盗の犯行との間でその手口及び態様が原判決がいうように著しく異なっているとはいえず、窃盗物品等については類似していること等を総合考慮すれば、被告人には、反復して窃盗行為をなす習癖、すなわち常習性があると認められるから、常習性を否定した原判決を肯定することはできない。以下、詳述する
  • 常習累犯窃盜罪の成立要件としては、その行為前10年間に窃盗罪等で3回以上6か月の懲役刑以上の刑の執行を受けたことのほかに、当該窃盗の犯行が常習として行われたこと、すなわち、当該犯行が、反復して窃盗行為をする習癖の発現としてなされることが必要であるが、右習癖はあるかないかで判断されれば足りるものであり、右習癖が特に顕著なものに限られるという原判決の判断は、常習性の要件を限定的に狭くとらえるものであって、相当ではない
  • そして、右の常習性の判断につき、常習特殊窃盗罪のように定まった手口、態様の犯行をなすことまで必要ではなく、当該犯行と前科の犯行の態様等の類似性は、常習性認定のための要件そのものではなく、常習性認定判断に用いる資料の内の一要素であると解すべきである
  • そこで、本件窃盗が窃盗の習癖の発現としてなされたものであるかどうかにつき、前科調書、判決書謄本10通及び調書判決謄本4通等により検討する
  • 1 被告人は、昭和27年3月29日から平成4年9月29日までの間、窃盜罪または常習累犯窃盗罪によって(罪名に右の各罪を含んでいる場合を含む。)、合計12回懲役刑に処せられ、通算約40年間近く服役していたものである上、本件は、常習累犯窃盗罪等による前刑の執行終了から約5か月後の犯行、前刑は、常習累犯窃盗罪等による前々刑の執行終了から1か月も経過しない内の犯行であるなど、被告人は前刑出所後短期間の内に 窃盗を行って再び服役するということを繰り返していることに照らすと、被告人は、窃盗行為を反復しているといわざるをえない
  • 2 次に、被告人の前記12回にわたる窃盜罪または常習累犯窃盗罪等の前科の内容をみると、合計210回を超える窃盗行為を行っており、その手口は、いわゆる空き巣や店舗荒らし等の侵入盗が多数であるが、他に自動車盜、自転車盜、車上狙いや置き引き等の事案も認められ、被告人は、多くの態様の窃盗行為を反復していることが認められる
  • したがって、確かに、被告人の多数の前科の中には本件と同様のいわゆる万引きの前科は存しないが、被告人は、多くの態様の窃盗行為を反復している上、その前科の中には、所有者や管理者の目を盗んで持ち去る点で万引きと形態において類似する置き引きや自転車盗等の事案も認められるのであることに照らすと、本件窃盗が、被告人の前科における窃盗とその犯行態様を著しく異にしているということはできない
  • 3 さらに、被告人の窃盜の前科における被害物品についてみると、現金だけでなく、貴金属類から始まり、自動車、自転車、電気製品や衣類、バッグ類、靴類等の日常品等様々な種類の物品を窃取していることが認められ、本件の被害品であるジャンパー、セカンドバッグ及び靴とは類似性が認められる
  • 以上のとおり、被告人の多数の窃盗罪または常習累犯窃盗罪の前科関係、前刑出所後短期間の内に窃盜を繰り返して再び服役するという生活を繰り返しており、本件も常習累犯窃盗罪等による前刑の執行終了から約5か月後の犯行であること、被告人は多くの態様の窃盗行為を反復しており、その中には、万引きと形態において類似する置き引きや自転車盗等の事案も認められること、本件の被害物品は、被告人の窃盗の前科における被害物品と類似性を有することなどの事実を総合考慮すれば、原判決が判示するように、被告人は、本件窃盗につき、知人にプレゼントしたいという動機を有しており、約5万7000円の現金を所持していたことから、必ずしも計画的な犯行とまではいえず、また、被告人が本件以外に万引きをしたという事実は窺われないとしても、被告人は、反復して窃盗行為をする習癖があり、本件窃盗は、その習癖の発現として行われたものであると認めることができる
  • したがって、常習性を否定して単純窃盗罪を認定した原判決は、常習性の有無につき事実を誤認したものであり、それが判決に影響を及ぼすことは明らかである
  • 検察官の論旨は理由がある

と判示し、原判決の常習性を認めず常習累犯窃盗罪を成立を否定し窃盗罪が成立するとした判断は誤りであり、常習性が認められ常習累犯窃盗罪成立するとしました。

②説に立っと思われる裁判例

東京高裁判決(平成10年10月12日)

 裁判所は、

  • 前科の回数、間隔、その動機、態様、出所後本件犯行に至るまでの期間やその間の生活態度、本件犯行及びその動機等判示の諸事情(判文参照)を総合すると、常習累犯窃盗罪の常習性が認められ、手口が熟練性を要しない単純なものであり、その手口のものが前科に含まれていないことは、本件犯行が常習性の発現として行われたことを否定すべき理由にはならない

と判示しました。

常習性の認定する証拠に制限はない


 常習性を認定する証拠に制限はありません。

 そのため、

  • 数回にわたり反復された窃盗行為の態様から常習性を認定すること(広島高裁判決 昭和24年10月19日)
  • 当該窃盗行為の態様とその行為前10年間に3回受刑した事実とを総合して認定すること(最高裁判決 昭和33年7月11日
  • それ以前の窃盗等の前科、非行歴、起訴猶予とされた事実、公訴時効の完成した事実とを総合して認定すること(暴力行為等処罰に関する法律違反についての福岡高裁判決 昭和42年8月18日:暴力行為等処罰に関する法律違反の事例)

もできます。

常習特殊窃盗罪(2条)との常習性との違い

 常習累犯窃盗罪の「常習として」の意義は、常習特殊窃盗罪(2条)の「常習として」の意義と同じです。

 ただし、常習累犯窃盗罪の常習性は、

  • 反復して窃盗罪・強盗罪等を犯す習癖を有すれば足りる

ものであり、常習特殊窃盗罪の常習性で必要とされる

  1. 凶器を携帯して犯したるとき
  2. 二人以上現場において共同して犯したるとき
  3. 門戸牆壁等を踰越損壊し又は鎖鑰を開き人の住居又は人の看守する邸宅、建造物もしくは艦船に侵入して犯したるとき
  4. 夜間人の住居又は人の看守する邸宅、建造物もしくは艦船に侵入して犯したるとき

という特別な方法についての常習性は必要とされません。

常習累犯窃盗罪の常習性が認められた裁判例

 常習累犯窃盗罪の常習性が認められた裁判例として、以下のものがあります。

仙台高裁判決秋田支部(昭和34年9月23日)

 裁判所は、

  • 刑務所出所後半年も経過しないうちに、さしたる理由もないのに20日間に10回の窃盜を敢行した場合には、その動機、手口、反復累行の期間、回数、前科の回数、それらの前科がいずれも窃盗罪によるものであること、非行歴その他諸般の事情に徴して常習性を認定し得る

と判示し、常習累犯窃盗罪の常習性を認めました。

大阪高裁判決(昭和42年7月24日)

 裁判所は、

  • 49日間という短期間内に19回の窃盗を反復して犯じた場合には、それだけで常習性が認められるものであり、相当長期間にわたって慣行的に反復継続されなければならないというものではない

と判示し、常習累犯窃盗罪の常習性を認めました。

東京高裁判決(昭和50年10月13日)

 裁判所は、

  • 15日間に2回にわたり、止宿先の旅館の茶の間や主人夫婦寝室に侵入し、タンス内の現金の各一部をそれぞれ抜き取り窃取した場合に、それらの行為の手口、方法、反復累行の事実に加えて、10年以内に窃盗罪2犯と常習累犯窃盗罪1犯の前科があり、それぞれ受刑した事実を総合じて常習性を認めることが可能であり、本件各犯行と前科との間に犯行の動機、態様、手段等に明白な相違がある場合には常習性を認定できないと制限的に解釈すべきではない

と判示し、常習累犯窃盗罪の常習性を認めました。

福岡高裁判決(昭和35年4月19日)

 裁判所は、

  • 3年7か月余りの短期間内に窃盗の前科3犯を有しそのうち2犯が万引きであって、いずれも刑務所出所後短期間で犯行に及んだ経歴を有する者が、刑務所釈放後8日目に万引きを行った場合には、態様が定型化しており、窃盗行為を反復累行する習癖に起因するものと認められ、常習性を認定しうる

と判示し、常習累犯窃盗罪の常習性を認めました。

高松高裁判決(昭和38年9月9日)

 裁判所は、

  • 10年以内の3犯の前科のほかに、窃盗の前科7犯を有する者が、2日間に2件の窃盗を行った場合には、刑執行終了後約2年間窃盗行為をしなかったとしても窃盗の常習性が消滅したとするのは早計であるし、上記3犯の前科のうち最初のものが常習累犯窃盗罪で、その後の2犯が単純な窃盗罪によるものであるからといって常習性を否定ずることはできない

と判示し、常習累犯窃盗罪の常習性を認めました。

東京高裁判決(昭和31年7月7日)

 裁判所は、

  • 2日間に窃盗・同未遂を2回行った場合に、それが職業的あるいは習癖的なものではなくても、前科の事実と相まって常習性を認定することが可能である

と判示し、常習累犯窃盗罪の常習性を認めました。

広島高裁判決(昭和24年10月19日)

 裁判所は、

  • 最後の刑を終えてから2年6か月後に本件犯行に及んだもので、その間終始正業に従事していたとしても常習性認定の妨げとはならない

と判示し、常習累犯窃盗罪の常習性を認めました。

広島高裁判決(平成10年3月19日)

 裁判所は、

  • 昭和27年3月から平成4年9月までの間、窃盗罪又は常習累犯窃盗罪によって合計12回懲役刑に処せられ、通算約40年間近く服役していたものである上、本件(平成8年4月、店内から靴等の商品を万引きしたもの)は、常習累犯窃盗罪等による前刑の執行終了から約5か月後の犯行、前刑は、常習累犯窃盗罪等による前々刑の執行終了から1か月も経過しないうちの犯行であるなど、被告人は、前刑出所後短期間のうちに窃盗を行って再び服役するということを繰り返していること、被告人の多数の前科の中には、万引きの前科は存しないが、万引きと形態において類似する置き引きや自転車盗の事案も認めら况ること、本件の被害物品は、被告人の窃盗の前科における被害物品と類似性を有することなどの事実を総合考慮すれば、被告人は、反復して窃盗行為をする習癖があり、本件窃盗は、その習癖の発現として行われたものであると認めることができる

と判示し、常習累犯窃盗罪の常習性を認めました。

東京高裁判決(平成10年10月12日)

 裁判所は、

  • 被告人は、昭和58年、昭和61年、平成2年、平成7年、平成8年の5回にわたり刑に処せられ服役しており、これらの前科の事案のうち、前の3回は侵入窃盜であり、後の2回は万引きによるもので、いずれも生一活に困った状態の中で手つ取り章く金品を取得する方法として犯されたものであること、被告人は、前刑で仮出獄してからいまだ約9か月、更生保護会を出て野宿生活を始めてから約1か月しか経過していないのに再び窃盗の犯行に及んでいること、被告人は、貯蓄する意欲に乏しく、更生保護施設の職員から貯金するようにたびたび言われ、その余裕があったにもかかわらず、就労して得た金を飲食遊興に当てるなどして使い果たし、自立するのに必要な貯金をするなど生活態度を改善する努力をしないまま、特に滞在を許された期間を含め約8か月間もの間滞在した後、ついに更生保護施設を出ざるを得なくなって公園で野宿をするようになり、その後は働こうとせず、自ら生活費の得られない生活状態に身を置いた中で、本件犯行に及んでいること、本件犯行は、野宿していた公園の野球場のバックネット裏に三脚のついたビデオカメラが設置されているのを発見するや直ちにそれらを窃取する決意をし、これを実行したというもので、その動機は、入質換金して生活費等を得るためであり、前科にも同じく入質換金を動機とするものが含まれていること等の諸事情を総合すると、被告人には、少なくとも生活に困るような状況下においては窃盗を反復累行するという習癖が形成されていたと認められ、機会があればそれが発現する状態にあって、本件犯行はその習癖の発現として行われたものと認めることができる

と判示し、常習累犯窃盗罪の常習性を認めました。

常習累犯窃盗の常習性が否定された裁判例

 常習累犯窃盗の常習性が否定された裁判例として、以下のものがあります。

広島高裁判決岡山市部(昭和30年2月1日)

 裁判所は、

  • 両親に死別した身寄りのない被告人が、30年間余り流浪の生活を送りながらも窃盗の罪を犯した形跡がなかったところ、昭和25年から昭和27年にかけて柿、米、自転車1台を窃取して3回の処罰を受けたが、それは流浪しているうちに食物に窮した上での行為であり、被告人の境遇上の事情に負うどころが多く、窃盜の習癖の発現したものと認めることはできない

と判示し、常習累犯窃盗罪の常習性を否定しました。

東京高裁判決(平成5年11月30日)

 裁判所は、

  • 前科の態様がいずれも古いアパートの所携のドライバーで錠を外して侵人し主として現金を盗んだものであるのに対して、本件犯行はスーパーマーケットで買い物をした際に缶詰2個を万引きしたという事案であり、動機、態様を著しく異にし、本件が窃盗の習癖の発現としてなされたものであるとは認められない

と判示し、常習累犯窃盗罪の常習性を否定しました。

次回の記事

 次の記事では、常習累犯窃盗罪の成立要件である

  1. 常習性の要件
  2. 前科の要件

のうち、「②前科の要件」を説明します。

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