刑事訴訟法(公判)

公判前整理手続とは?④ ~「検察官の証明予定事実の提出、証拠調べ請求と証拠の開示」「証拠の一覧表の交付」を説明

 前回の記事の続きです。

 前回の記事では、

  • 公判前整理手続で話し合われる事項
  • 公判前整理手続中の被告人への意思確認のための質問

を説明しました。

 今回は、

  • 検察官の証明予定事実の提出、証拠調べ請求と証拠の開示
  • 証拠の一覧表の交付

を説明します。

検察官の証明予定事実の提出、証拠調べ請求と証拠の開示

 事件が公判前整理手続に付されたときは、検察官は以下の①~③のことを行います。

  1. 証明予定事実(検察官が公判において証拠により証明しようとする犯罪事実)を記載した書面を、裁判所に提出し、被告人又は弁護人に送付する(刑訴法316条の13第1項
  2. 裁判所に対し、証明予定事実を証明するために用いる証拠(検察官請求証拠)の取調べを請求する(刑訴法316条の13第2項
  3. 検察官請求証拠(検察官が公判で裁判官に提出する証拠)を被告人又は弁護人に開示して閲覧させる(刑訴法316条の14第1項)。

 以下で詳しく説明します。

証明予定事実とは?

 証明予定事実とは、

検察官が公判において証拠により証明しようとする犯罪事実

をいいます(刑訴法316条の13第1項前段)。

 検察官が証明予定事実を記載した書面を作成するに当たっては、以下の①~③の事項を守らなければなりません。

  1. 証拠とすることができず、又は証拠としてその取調べを請求する意思のない資科に基づいて、裁判所に事件について偏見又は予断を生じさせるおそれのある事項を記載してはならない(刑訴法316条の13第1項後段
  2. 事件の争点及び証拠の整理に必要な事項を具体的かつ簡潔に明示しなければならない(刑訴法規則217条の20第1項)。
  3. 事実と証拠との関係を具体的に明示するなどして、争点及び証拠の整理が円滑に行われるように努めなければならない(刑訴法規則217条の21)。

検察官が被告人・弁護人に証拠開示をする方法

 証拠開示の方法は、証拠の性質に応じて、刑訴法316条の14第1項第1号、2号に規定されています。

 特に、公判において、証人、鑑定人、通訳人、翻訳人の証人尋問を行う場合には、

  • 証人となる者の氏名・住居に加えて、その者の「供述録取書等」のうち、その者が公判期日において供述すると思科する内容が明らかになるものを開示しなけれはならない
  • 供述録取書等が存在しないとき、又はこれを閲覧させることが相当でないと認めるときには、その者が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面を開示しなければならない

と規定さています。

 「供述録取書等」とは、刑訴法290条の3に規定があり、「供述書、供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるもの又は映像若しくは音声を記録することができる記録媒体であつて供述を記録したもの」と定義されています。

証拠の一覧表の交付

 検察官は、被告人・弁護人に対し、証拠の開示して閲覧させた後、被告人又は弁護人から請求があったときは、速やかに、被告人又は弁護人に対し、検察官が保管する証拠の一覧表(「証拠の一覧表」という)を交付しなければなりません(刑訴法316条の14第2項)。

 また、検察官が証拠の一覧表を交付した後、証拠を新たに保管するに至ったときは、速やかに、被告人・弁護人に対し、新たに保管するに至った証拠の一覧表を交付しなければなりません(刑訴法316条の14第5項)。

 証拠の一覧表を交付する目的は、

被告人・弁護人に、検察官が保管する証拠を把握させ、後に被告人・弁護人が検察官に対して行う未開示の証拠(類型証拠争点関連証拠の開示請求が円滑・迅速に行われるようにすることにより、公判前整理手続を円滑・迅速に進行させること

にあります。

【類型証拠とは?】

 類型証拠とは、刑訴法316条の15に規定される証拠です。

 類型証拠とは、検察官請求証拠(検察官が公判で裁判官に提出する証拠)以外の証拠で、刑訴法316条の15の1号~9号に該当する証拠をいいます。

【争点関連証拠とは?】

 争点関連証拠とは、刑訴法316条の20に規定される証拠です。

 争点関連証拠とは、「検察官請求証拠(検察官が公判で裁判官に提出する証拠)」と「類型証拠」以外の未だに検察官から被告人・弁護人に対して開示されていない証拠で、公判前整理手続において争点となっている事項に関連する証拠をいいます。

証拠の一覧表の交付時期

 検察官が、被告人・弁護人に対し、証拠の一覧表を交付する時期は、

検察官請求証拠(検察官が公判で裁判官に提出する証拠)の開示後

とされています。

 これは、証拠の一覧表は、弁護人が、類型証拠、争点関連証拠の開示を請求する際の手がかりとして用いるものという位置付けにあるので、証拠の一覧表の交付は、検察官請求証拠の開示後にすることとされています。

証拠の一覧表は、被告人・弁護人の請求があった場合に限り交付する

 被告人・弁護人において、検察官に対して、類型証拠や争点関連証拠の証拠開示請求をする予定がない場合や、証拠開示請求をするとしても、証拠の一覧表を必要としない場合には、証拠の一覧表の交付は必要ないといえます。

 そのため、証拠の一覧表の交付は、被告人・弁護人から、交付の請求があった場合に限り、交付するとされています(刑訴法316条の14第2項)。

証拠の一覧表の記載事項

 証拠の一覧表には、以下の①~③の事項を一つの証拠ごとに記載する必要があります(刑訴法316条の14第3項)。

  1. 証拠物については、品名及び数量
  2. 供述を録取した書面で供述者の署名又は押印のあるものについては、その書面の標目、作成の年月日、供述者の氏名
  3. 上記②以外の証拠書類については、証拠書類の標目、作成の年月日、作成者の氏名

証拠の一覧表に記載しないことができる事項

 証拠の一覧表に記載することにより、以下の①~③のおそれがある事項については、これを証拠の一覧表に記載しないことができます(刑訴法316条の14第4項)。

  1. 人の身体若しくは財産に害を加え、又は人を畏怖させ、若しくは困惑させる行為がなされるおそれがある事項
  2. 人の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがある事項
  3. 犯罪の証明又は犯罪の捜査に支障を生ずるおそれがある事項

証拠の一覧表の交付手続について不服を申し立てることはできない

 証拠の一覧表の交付手続については、不服申立ての手続が設けられていません。

 よって、証拠の一覧表の記載や交付に関して不服があっても、不服申立てをすることはできません。

次回の記事に続く

 次回の記事では、

  • 検察官による類型証拠の開示

を説明します。