刑事訴訟法(公判)

公判前整理手続とは?⑨ ~「公判前整理手続終了後の新たな証拠調べ請求の制限」「公判前整理手続に付された事件ならではの第1回公判での手続(被告人の弁護人の冒頭陳述、公判前整理手続の結果の顕出)」を説明

 前回の記事の続きです。

公判前整理手続が終了した後は、新たな証拠の証拠調べ請求は制限される

 公判前整理手続の終了は、検察官、被告人・弁護人は、新たな証拠の証拠調べ請求ができなくなります。

 もし、公判前整理手続の終了後、新たな証拠の証拠調べ請求することを無制限に認めると、公判前整理手続で争点や証拠を整理したことの意味がなくなってしまいます。

 そのため、公判前整理手続の終了後は、検察官、被告人・弁護人は、やむを得ない事由によって公判前整理手続において請求することができなかったものを除き、証拠調べを請求することができないとされます(刑訴法316の32第1項)。

 ただし、裁判所が、必要と認めるときは、裁判所の職権で(裁判所自らの判断で)証拠調べをすることを妨げるものではないとされています(刑訴法316の32第2項)。

公判前整理手続が終了した後は、新たな主張をすることは制限されない

 刑訴法316の32は、新たな証拠の証拠調べ請求を制限する規定であって、公判前整理手続後の新たな主張を制限する規定はありません。

 なので、本番の公判において、被告人が公判前整理手続では出て来なかった新たな主張に沿った供述をし始めても、それを当然に制限することはできません。

 ただし、公判前整理手続の状況によっては、公判期日における新たな主張に関する被告人供述が制限されることがあり得ることが以下の判例で示されています。

最高裁決定(平成27年5月25日)

 裁判官は、

  • 公判前整理手続は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うため、事件の争点及び証拠を整理する手続であり、訴訟関係人は、その実施に関して協力する義務を負う上、被告人又は弁護人は、刑訴法316条の17第1項所定の主張明示義務を負うのであるから、公判期日においてすることを予定している主張があるにもかかわらず、これを明示しないということは許されない
  • こうしてみると、公判前整理手続終了後の新たな主張を制限する規定はなく、公判期日で新たな主張に沿った被告人の供述を当然に制限できるとは解し得ないものの、公判前整理手続における被告人又は弁護人の予定主張の明示状況(裁判所の求釈明に対する釈明の状況を含む。)、新たな主張がされるに至った経緯、新たな主張の内容等の諸般の事情を総合的に考慮し、前記主張明示義務に違反したものと認められ、かつ、公判前整理手続で明示されなかった主張に関して被告人の供述を求める行為(質問)やこれに応じた被告人の供述を許すことが、公判前整理手続を行った意味を失わせるものと認められる場合(例えば、公判前整理手続において、裁判所の求釈明にもかかわらず、「アリバイの主張をする予定である。具体的内容は被告人質問において明らかにする。」という限度でしか主張を明示しなかったような場合)には、新たな主張に係る事項の重要性等も踏まえた上で、公判期日でその具体的内容に関する質問や被告人の供述が、刑訴法295条1項により制限されることがあり得るというべきである

と判示しました。

公判前整理手続に付された事件ならではの第1回公判での手続

 公判前整理手続に付された事件ならではの第1回公判で行うべき手続として、

  1. 被告人の弁護人の冒頭陳述
  2. 公判前整理手続の結果の顕出

があります。

① 被告人の弁護人の冒頭陳述

 公判前整理手続が終了すると、第1回目の公判になります。

 通常の公判では、公判の最初に、検察官は冒頭陳述(検察官が公判で証拠により証明しようとする事実を述べること)を行います。

 通常の公判では、被告人の弁護人は、冒頭陳述は行いません。

 しかし、公判前整理手続に付された事件については、被告人の弁護人は、冒頭陳述を行わなければならないとされます。

 刑訴法316条の30において、

  • 公判前整理手続に付された事件については、被告人又は弁護人は、証拠により証明すべき事実その他の事実上及び法律上の主張があるときは、第296条の手続に引き続き、これを明らかにしなければならない

と規定し、被告人の弁護人は、冒頭陳述を行うことが求められています。

② 公判前整理手続の結果の顕出

 公判前整理手続に付された事件について、裁判所は、被告人・弁護人の冒頭陳述が終了した後、公判において、公判前整理手続の結果を明らかにすることを行います(刑訴法316条の31第1項)。