法律(刑法)

作為犯・不作為犯とは? ~不真正不作為犯の成立要件~

作為犯とは?不作為犯とは?

 犯罪は、作為犯不作為犯に分けることができます。

 

 作為とは、積極的動作をいいます。

 つまり、行動することです。

 これに対し、不作為とは、消極的動作をいいます。

 つまり行動しないことです。

 

 作為(行動すること)によって行われる犯罪を作為犯といいます。

 たとえば、殺人罪や窃盗罪です。

 これに対し、不作為(行動しないこと)によって行われる犯罪を不作為犯といいます。

 たとえば、不退去罪や不保護罪です。

 さらに、不作為犯は、真正不作為犯と不真正不作為犯に分けることができます。

真正不作為犯とは?

 真正不作為犯とは、

法律の条文が不作為(~しなかった)の形式で書かれている犯罪

をいいます。

 たとえば、不退去罪(退去しなかった)、不保護罪(生存に必要な保護をしなかった)、多衆不解散罪(解散しなかった)は、真正不作為犯です。

 それそれの条文に、不作為(~しなかった)の内容がしっかり書かれています。

不真正不作為犯とは?

 不真正不作為犯とは、

法律の条文が不作為(~しなかった)の形式で書かれていない犯罪

をいいます。

 角度を変えた説明をすると、

法律の条文が作為の形式で書かれている犯罪を、不作為(しないこと)によって実現する犯罪

をいいます。

 たとえば、殺人罪は作為犯(行動することによって実現する犯罪)ですが、不作為(行動しないこと)によって実現しうる犯罪の代表格です。

 母親が、自分の赤ちゃんを殺そうとして、授乳しないで餓死させた場合、不作為による殺人罪が成立します。

 「人を殺す」という目的を「不作為(何もしないこと)」によって実現するのです。

 『母親は、赤ちゃんの命に対して責任を負う立場にあり、赤ちゃんを餓死させないように授乳する法的義務がある』という考え方がとられます。

 よって、「授乳しない」という不作為は、単に何もしないということではなく、

  法的義務に違反する行為をした

  (殺人行為をした)

とされるのです。

不真正不作為犯の成立要件

 不真正不作為犯が成立するには、

  • 法的作為義務の存在
  • 作為の可能性
  • 故意の実行行為としての不作為
  • 不作為結果と結果の因果関係

の4つの要件が必要です。

 詳しく説明していきます。

1 法的作為義務の存在

 法的作為義務の存在とは、

行為者に結果の発生を防止すべき行動をする法律上の義務があること

をいいます。

 先ほどの例に当てはめると、母親は、赤ちゃんが餓死しないようする法律上の義務があったわけです。

2 作為の可能性

 作為の可能性とは、

行為者において作為義務を行うことで、結果の発生を防止できる可能性があったこと

をいいます。

 作為義務を行うことができなかった場合は、不真正不作為犯は成立しません。

 たとえば、「自分の子供が川に落ちておぼれたが、母親は泳ぎが得意ではなく、自分も溺れる可能性があったため、助けずに死なせた」という場合は、「作為義務を行うことができなかった」として、不作為による殺人罪は成立しません。

 『作為義務の強さ』と『作為の容易性』が天秤にかけられ、不作為の犯罪が成立するかどうかが判断される点がポイントです。

3 故意の実行行為としての作為

 故意の実行行為としての作為とは、

行為者が故意に(わざと)作為義務を行わなかったこと

をいいます。

 自宅の神棚のロウソクが倒れそうになっていたが、「このままロウソクが倒れて火事になれば、保険金がとれる」と思い、そのまま外出し、本当に火事になった場合、不作為による放火罪が成立します【最高裁判例昭和33.9.9】。

 犯人が、故意に(わざと)ロウソクが倒れるのを防がなかったため、故意の実行行為(犯罪行為)が認められるのです。

4 不作為結果と結果の因果関係

 不作結果と結果の因果関係とは、

不作為者が期待された必要な行為をしたならば、結果が発生しなかったと認められる関係があること

をいいます。

 たとえば、母親が故意に赤ちゃんに授乳しないで餓死させた場合は、

『不作為者(母親)が期待された必要な行為(授乳)をしたならば、結果(餓死)が発生しなかった』

と認められることになります。

 『何もしなかったからこそ、その結果が発生したと認められる場合』(授乳しなかったからこそ、餓死した)と考えてもOKです。

まとめ

 犯罪は、

  • 作為犯(ex 殺人罪)
  • 不作為犯(ex 不退去罪、不作為による殺人罪)

に分けることができます。

 さらに、不作為犯は、

  • 真正不作為犯(ex 不退去罪)
  • 不真正不作為犯(ex 不作為による殺人罪)

に分けることができます。

  そして、不真正不作為犯の成立要件は、

  • 法的作為義務の存在(犯罪の結果発生を行動することによって防ぐ義務がある)
  • 作為の可能性(犯罪の結果発生を防ぐことが可能であった)
  • 故意の実行行為としての不作為(わざと作為義務を行わなかった)
  • 不作為結果と結果の因果関係(不作為と犯罪結果の発生に因果関係がある)

 の4つになります。