刑事訴訟法(捜査)

一罪一逮捕一勾留の原則とは? ~「一罪一逮捕一勾留の原則の例外と法的根拠」「同じ犯罪事実で再度の逮捕・勾留ができる場面」を刑事訴訟法で解説~

一罪一逮捕一勾留の原則とは?

 一罪一逮捕一勾留の原則(いちざい いちたいほ いちこうりゅうのげんそく)とは、

同じ犯罪事実で、再度、被疑者を逮捕・勾留できない原則

をいいます。

 たとえば、窃盗罪で逮捕・勾留された被疑者が、犯行内容が軽微ということで釈放されたとします。

 しかし、後日、同じ窃盗罪の事実で、再度、逮捕・勾留されたとしたら、それは「一罪一逮捕一勾留の原則」に反し、違法逮捕・違法勾留になります。

 同一の犯罪事実について、再度の逮捕・勾留が許されない理由は、

  • 不当な逮捕・勾留の蒸し返しが起きる
  • 法が逮捕・勾留に時間制限を設けた意味が失われる

ためです。

【参考説明】逮捕・勾留の時間制限とは?

 法が設けている逮捕・勾留の時間制限は以下のとおりです。

  • 警察官が被疑者を逮捕した場合に、逮捕から48時間以内に被疑者を検察官に送らなければならない(刑訴法203条1項
  • 検察官が被疑者を逮捕した場合に、逮捕してから48時間以内(かつ、逮捕してから72時間以内)に裁判官に勾留請求しなければならない(刑訴法204条1項
  • 先ほどの刑訴法203条1項の規定により、警察官から被疑者の送致を受けた検察官は、送致を受けてから48時間以内に裁判官に勾留請求しなければならない(刑訴法205条1・2項
  • 逮捕された被疑者は、検察官が裁判官に対して行った勾留請求が認められ、勾留状が発布されると、10日間、警察署の留置施設で勾留される(刑訴法208条1項
  • 勾留期間は、必要があれば、10日間延長できる(刑訴法208条2項
  • 勾留期間は、国を脅かす罪(内乱・外患・外交・騒乱に関する罪)については、さらに5日間延長できる(刑訴法208条の2

一罪一逮捕一勾留の原則の例外

 同じ犯罪事実で再度の逮捕・勾留が全くできないかと問われると、そうではありません。

 同じ犯罪事実で、再度の逮捕・勾留を行うことが必要となる場面が出てくることもあり、

 一罪一逮捕一勾留の原則の例外

が存在します。

 たとえば、同じ犯罪事実で再度の逮捕・勾留が必要となる場面とは、

  • 逮捕・勾留中の被疑者が逃走したため、再度の逮捕・勾留が必要となる場面
  • 逮捕・勾留手続に違法があり、その違法を是正するため、あらためて適法な逮捕・勾留を行うために、再度の逮捕・勾留が必要となる場面
  • 逮捕・勾留の必要性がなくなったとして被疑者を釈放したが、後日、重要証拠が出てきたため、再度の逮捕・勾留が必要となる場面

などが考えられます。

 これらの場面における再度の逮捕・勾留は、

不当な逮捕・勾留の蒸し返しにならない

ことから、一罪一逮捕一勾留の原則の例外として認められるとされます。

例外的に同じ犯罪事実で再度の逮捕・勾留が認められる根拠法令

 同じ犯罪事実で再度の逮捕・勾留が認められることを直接的に規定する法律の条文はありませんが、間接的に規定する条文があります。

 その条文とは、刑訴法199条3項と刑訴法規則142条1項8号です。

 刑訴法199条3項では、

『検察官又は司法警察員は、第1項の逮捕状を請求する場合において、同一の犯罪事実についてその被疑者に対し、前に逮捕状の請求又はその発付があったときは、その旨を裁判所に通知しなければならない』

と規定しています。

 刑訴法規則142条1項8号では、

『同一の犯罪事実又は現に捜査中である他の犯罪事実について、その被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があつたときは、その旨及びその犯罪事実を記載しなければならない』

旨を規定しています。

 これらの条文が意味することは、

同じ犯罪事実で再度の逮捕・勾留が行われる場面があることを法が想定している

ということです。

 これらの条文が根拠法令となり、例外的に、同じ犯罪事実で再度の逮捕・勾留が認められるとされます。

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