法律(刑事訴訟法)

検察官、検察事務官を刑事訴訟法、検察庁法で解説 ~「独任制官庁」「検察官同一体の原則」「警察への指揮権」「検察事務官の捜査権限」を解説~

検察官とは?

 検察官は、

犯罪を捜査し、犯人を裁判にかけ、裁判で犯人の有罪を証明する

職務を果たす国家機関です。

 犯人を裁判にかけるとは、

  • 犯人を起訴する
  • 公訴を提起する

と表現します。

 根拠法令は、刑事訴訟法検察庁法にあります。

 刑訟法191条に、

「検察官は、必要と認めるときは、自ら犯罪を捜査することができる」

と明記されています。

 検察庁法4条には、

「検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、かつ、裁判の執行を監督する」

旨が明記されています。

 刑訴法247条には、

「公訴は、検察官がこれを行う」

と明記されています。

 ちなみに、検察官は、公訴を提起しない判断をする権限もあり、刑訴法248条には、

「(検察官は、)犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」

と明記しています。

検察官は独任制官庁と呼ばれる

 一人の検察官が行う意思決定は、国家が行う意思決定と見なされます。

 このことから、検察官は、

独任制官庁

と呼ばれます。

 独任制とは、行政機関の一人の者の意思によって、行政機関の意思が決定される制度をいいます。

 行政機関の意思決定を行うにあたり、複数の者で合議する必要がなく、単独で意思決定ができるということです。

 検察官のほか、各省大臣,都道府県知事,市町村長などが独任制の行政機関になります。

(ちなみに、行政機関の意思決定をするにあたり、複数の者で合議する必要がある制度を合議制といいます)

 官庁とは、国家事務について、国家意思を決定する権限を有する国家機関のことをいいます。

 一人の検察官が行う意思決定は、ダイレクトに国家機関が行う意思決定になるので、検察官は、独任制官庁と呼ばれるのです。

 ここで、「検察官が行う意思決定」とは、

犯人を起訴するか、起訴しないか

という意思決定を指します。

 犯人を起訴するとは、公訴を提起し、裁判にかけるということです。

 犯人を起訴しないとは、公訴を提起せず、不起訴処分にするということです。

 犯人を起訴するか、起訴しないかの意思決定は、検察官一人の意思決定で行われる国家としての意思決定なのです。

 なので、検察官は、検察庁の名ではなく、「検察官〇〇〇」というふうに、検察官自身の名前をもって犯人を起訴するのです。

検察官同一体の原則

 検察官は、独任制官庁なので、それぞれの検察官が、各自の名前を使って、公訴権を行使します。

 ここで問題になるのが、それぞれの検察官が、それぞれの意思で公訴権を行使したのでは、全体として、バランスがとれ、統一された公訴権が行使できないということです。

 国家機関の意思決定は、常に一体的な意思決定が要求されるのに、検察官によっては、極端に偏った意思決定をする人が現れるかもしれません。

 この問題を解決するために採用されている原則が、

検察官同一体の原則

という制度です。

 検察官同一体の原則とは、

  • 検察官は、上司となる検察官の指揮監督に服さなければならない

➡これを「上司の指揮監督権」といいます(検察庁法7~10条)

  • 各検察官が行う業務は、上司となる検察官の業務を、部下にあたる検察官に振り分けた上で取り扱わせている業務である

➡これを「上司の事務引取移転権」といいます(検察庁法12条)

という考え方に基づく原則です。

 検察官同一体の原則のイメージは、検察官のトップである検事総長を頂点としたピラミッド型組織です。

 全ての事件は、検事総長の事件であり、より上位の検察官の順に、より上位の検察官の指揮監督のもと、下へ下へと事件を下ろしていくイメージです。

 ちなみに、検察官の職務階級は上から順に

  • 検事総長(最高検察庁のナンバー1)
  • 次長検事(最高検察庁のナンバー2)
  • 検事長(高等検察庁のナンバー1)
  • 検事正(地方検察庁のナンバー1)
  • 検事
  • 副検事

となっています(検察庁法3、7~9条)。

検察官と警察官の職務の違い

 検察官と警察官の職務は、犯罪を捜査する点については同じです。

 検察官と警察官の職務の大きな違いは、

検察官は公訴を提起し、公訴を維持する職務を担っているのに対し、警察官は公訴に関する職務を担っていない

という点にあります。

 「公訴を提起する」とは、「犯罪を犯した犯人を起訴し、裁判にかける」ということです。

 「公訴を維持する」とは、「裁判で証拠を裁判官に提出し、犯人の有罪を証明する」ということです。

 警察官には、公訴を提起し、公訴を維持する権限はありません。

 検察官は、司法試験を突破した法律家であるのに対し、警察官は法律家ではありません。

 裁判で検察官が対峙するのは、同じく司法試験を突破し、同じ法律家である裁判官と弁護人です。

 裁判は、法律家同士の戦いになることからも、公訴を提起し、公訴を維持する権限は、法律家である検察官のみに与えられているのです。

検察官の警察官に対する指揮権

 検察官(検察庁に所属)と警察官(都道府県に所属)は、それぞれ異なる組織の捜査機関であり、検察官と警察官の関係は、原則として協力関係になっています(刑訴法192条)。

 とはいえ、法律家であり、公訴を提起する権限をもつ検察官は、警察官に捜査指示を出すことができます(刑訴法193Ⅱ条)。

 そして、警察官は、検察官の捜査指示に従わなければなりません(刑訴法193Ⅳ条)。

 検察官の捜査指示に従わない警察官は、懲戒や罷免の訴追を受ける可能性があります(刑訴法194条)。

 ちなみに、検察官が警察官に指示を出せるのは、捜査に関する事項だけです。

 捜査以外の事項については、指示ではなく、嘱託(依頼)のかたちをとることになります。

検察事務官とは?

 検察官を補佐し、検察官と一緒に業務を遂行するのが、

検察事務官

です(刑訴法191Ⅱ条、検察庁法27Ⅲ条)。

検察官と検察事務官の関係

 検察事務官は、検察官から独立して犯罪捜査はできず、検察官の指揮命令を受けて捜査を行います。

 検察事務官にも、検察官の指揮命令を受ければ、独自の権限で行える業務があります。

 検察事務官が、独自の権限として行うことができる業務は、

などがあります。

 検察事務官の権限は、警察官(司法警察員)と同等と考えればOKです。

※ 警察官は、司法警察員(捜査権限を多くもつ警察官)と司法巡査(捜査権限が少ない警察官)に分けれらます(詳細は、前回の記事で説明しています)。

 とは言うものの、検察事務官には、司法警察員が持っている

の権限はありません。

 このことから、権限の多さとしては、

  司法警察員 > 検察事務官 > 司法巡査

の順になっています。

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