刑法(わいせつ物頒布等罪)

わいせつ物頒布等の罪(2)~「わいせつ物頒布等の罪の合憲性」を説明

 前回の記事の続きです。

わいせつ物頒布等の罪の合憲性

 わいせつ物頒布等の罪(刑法175条)は、

との関係で問題があるとされ、合憲性が争われたことがありました。

 さらに、「わいせつ」が規範的構成要件要素(法解釈によってその要素の内容を確定することには限界があり、ある事実がその要素に該当するか否かについては、最終的に裁判官がその当時の社会常識によって規範的・評価的な価値判断を行って決定せざるを得ない部分を含んでいる構成要件要素)であることから、構成要件の明確性との関係で、

に違反するのではないかとして、合憲性が争われたことがありました。

 結論として、判例は、わいせつ物頒布等の罪の合憲性を認めています。

わいせつ物頒布等の罪は、憲法21 条(表現の自由)、憲法23条(学問の自由)の関係で合憲であるとした判例

 最高裁判決(昭和32年3月13日)は、憲法21条(表現の自由)との関係につき

  • 憲法の保障する各種の基本的人権についてそれぞれに関する各条文に制限の可能性を明示していると否とにかかわりなく、憲法12条13条の規定からしてその濫用が禁止せられ、公共の福祉の制限の下に立つものであり、絶対無制限のものでないことは、当裁判所がしばしば判示したところである
  • この原則を出版その他表現の自由に適用すれば、この種の自由は極めて重要なものではあるが、しかしやはり公共の福祉によって制限されるものと認めなければならない
  • そして性的秩序を守り、最小限度の性道徳を維持することが公共の福祉の内容をなすことについて疑間の余地がない

との判断を示し、憲法21条で保障される表現の自由も公共の福祉により制限されることを明らかにし、わいせつ物頒布等の罪の合憲性を認めました。

わいせつ物頒布等の罪は、憲法31条(法定手続の保障)との関係で合憲であるとした判例

 最高裁判決(昭和54年11月19日)は、

  • 刑法175条にいう「わいせつ」とはいたずらに性欲を興奮または刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的差恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいうこと当裁判所の判例(中略)とするところであり、同条の構成要件が所論のように不明確であるということはできない

とし、わいせつ物頒布等の罪は憲法31条(法定手続の保障)に違反しないとしました。

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