刑法(賭博罪)

賭博罪(3)~「賭博及び宝くじに関する罪(刑法23章)に関連する特別刑法の規定の合憲性」を説明

 前回の記事の続きです。

賭博及び宝くじに関する罪(刑法23章)に関連する特別刑法の規定の合憲性

 賭博及び宝くじに関する罪(刑法23章)に関連する特別刑法における罰則の合憲性について判示した裁判例・判例として、以下のものがあります。

競馬法30条3号の規定が違憲ではない旨判示した裁判例

東京高裁判決(昭和40年4月6日)

 裁判所は、

  • 個人のする賭博ないし賭博開張図利の所為は、これを一般大衆の恣意に放任するにおいては、一般国民の射幸心ないしは遊惰を醸成若しくは助長させるおそれがあり、ために善良の風俗に惇り公共の福祉を害するからこれを禁止すべきものとするも、公共機関の厳重、公正な規制の下における射幸心の発露は右害悪を比較的尠少に止め得るから、これを公許して犯罪とみないということも複雑多岐の社会生活を規制する上からはむしろ賢明な措置として是認されるべきであると言わねばならない

と判示しました。

大阪高裁判決(昭和48年11月13日)東京高裁判決(昭和48年12月25日)

 裁判所は、

  • 競馬も人の射幸心に依拠し、偶然の要素が加わって勝敗を決するものであるとはいえ、競馬法は、その主催者を日本中央競馬会、都道府県または市町村と定め(競馬法1条)、馬の改良増殖その他畜産の振興を目的として、農林大臣、都道府県知事の監督(同法25条)のもとに、各所定の制限、罰則を設けて、公正な競馬および勝馬投票権の発売等を行わせることにしているのであり、これを何ら前記のような健全なる社会的目的をも有せず、かつそれにつき法的規制も行われていない賭博行為と同列には論じえない

と判示しました。

自転車競技法の罰則規定が違憲ではない旨判示した判例

最高裁判決(昭和29年4月6日)

 裁判所は、

  • 自転車競技法第14条第2号(昭和27年法律第220号による改正前のもの)の規定は違憲でない

と判示しました。

最高裁判決(昭和36年5月26日)

 裁判所は、

  • 所論は、自転車競技法第18条第2項(※旧法)の処罰規定は、憲法第25条第2項に違反するものであるから、これに基づき処罰することは違憲であると主張する
  • しかし、憲法第25条の法意は、国がすべての生活部面について社会福祉、社会保障の向上及び増進のための公共的配慮をなすべき責務のあることを宣言したにとどまり、個々の国民に対し、これに対応して具体的、現実的な権利を有することを認めたものと解すべきではなく、また、国が犯罪者に対し刑罰を定めその適用に関する規定を立法するについて制限を加えたものと解すべきでないことも、いずれも当裁判所の判例(昭和23年(れ)第205号同年9月29日大法廷判決、集2巻10号1235頁、昭和22年(れ)第105号同23年4月7日大法廷判決、集2巻4号298頁、昭和25年(あ)第228号同年7月19日大法廷判決、集4巻8号、1488頁各参照)の趣旨に徴して明らかである
  • されば、所論自転車競技法第18条第2号の規定が憲法第25条第2項に違反するから無効である旨の主張の採ることを得ないことは、右判例の趣旨に照して明らかである

と判示しました。

最高裁判決(昭和37年4月19日)

 裁判所は、

  • 自転車競技法18条の規定を以て、憲法36条にいわゆる残虐な刑を定めたものといえないことは当裁判所大法廷判決(昭和22年(れ)323号同23年6月23日宣告刑集2巻7号777頁以下参照)の趣旨に徴し明らかである

と判示しました。

モーターボート競走法は憲法14条に違反するものではない旨判示した判例

最高裁決定(昭和43年2月15日)

 裁判所は、

  • 所論は、憲法第14条第1項違反をいうが、モーターボート競走法第27条第2号(※旧法)は同号に規定する行為を何人に対しても禁止し、これに違反した者を無差別に処罰するのであるから、所論違憲の主張はその前提を欠く

と判示しました。

賭博及び宝くじに関する罪(刑法23章)に関連する罰則

 賭博等に該当する行為であっても、一定の要件を具備する場合には容認されること等を定める法律として、以下のものがあります。

  1. 金融商品取引法
  2. 当せん金付証票法
  3. 競馬法
  4. 自転車競技法
  5. 商品先物取引法
  6. モーターボート競走法
  7. 小型自動車競走法
  8. スポーツ振興投票の実施等に関する法律

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