刑法(賭博開張等図利罪)

賭博開張等図利罪(2)~「賭博場とは?」を説明

 前回の記事の続きです。

賭博場とは?

1⃣ 賭博開張図利罪は、刑法186条2項において、

  • 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の拘禁刑に処する

と規定されます。

 この記事では、「賭博場」の意味について説明します。

 賭博開張図利罪(刑法186条2項)における「賭博場」とは、

  • 賭博を行う場所
  • 賭博のための場所的設備

を指します。

 その場所・設備が、房屋であることや、常設のものであることを要しません。

 また、賭博のために特に設けられたものであることや、犯人の支配下にあることも要しません。

 この点に関する以下の判例があります。

大審院判決(昭和7年4月12日)

 株式取引所参観席を賭場とした事案で、裁判所は、

  • その賭博を為さしむべき場所は、特に設けられたると否と自己の支配下に在る場ばると否とを問わず、その設備の程度如何を問うことなり

と判示しました。

東京高裁判決(昭和44年11月5日)

 麻雀遊技場を賭場とした事案で、裁判所は、

  • その場所はとくに賭博をさせる目的で設けられたものであることを必要とせず

と判示しました。

2⃣ 「財物を賭ける行為」「偶然の事情を決する行為」「財物を分配する行為」がすべてその場所において行われないからといって賭博場たり得ないものではありません。

 この点に関する以下の判例があります。

大審院判決(大正2年10月7日)

 相場賭博の事案で、裁判所は、

  • ある種の博戯又は賭事については、論旨の如く財物を賭する行為、偶然の輸贏(勝敗)を決する行為及び賭財分配の行為が全て同一の場において行わるることを常とすといえども、この種の各行為が全て同一の場所において行われざるの故をもって賭場なしということを得ざるはもちろんなるのみならず

と判示しました。

3⃣ 賭博者が自ら賭博場に参集せず、開張者の使者を介して又は電話等により開張者と交渉するような場合でも、その事務を行っている場所は賭博場となり得えます。

 この点に関する以下の判例があります。

大審院判決(大正4年3月1日)

 空相場賭博の事案で、裁判所は、

  • 注文者たる賭者が自ら判示店舗に参集することは賭場開張罪の要件にあらず
  • 賭場開張者又はその幇助者若しくは単純の使者が店舗外に出張して注文者と交渉し、若しくは注文者たる賭者が電信電話郵便等により又は使者を介して賭場開張者と交渉することありとするも賭場開張罪の成立を妨げず

と判示しました。

4⃣ 野球賭博の事案においては、電話で申込みを受けるなどし賭客が一定の場所に集合しないのが通例です。

 このような野球賭博に係る賭場開張の事案でも、賭博場開張の場所を欠如するものではなく、賭博開張図利罪が成立します。

最高裁判決(昭和48年2月28日)

 裁判所は、

  • 刑法186条2項の賭場開張図利罪が成立するためには、必ずしも賭博者を一定の場所に集合させることを要しないものと解すべきであり、そして、各原判決の判示する右事実関係に徴すれば、被告人Xの前記4日にわたる「野球賭博」開催の各所為は(中略)事務所を本拠として各賭客との間に行なわれたものというべきであるから、賭博場開張の場所を欠如するものではない
  • 一般多数人をしてプロ野球の勝敗に関する賭銭博奕(いわゆる「野球賭博」)を行なわせて利を図るため、ある場所に電話、帳面、プロ野球日程表等を備えつけ、同所において、電話により賭客の申込みを受け、あるいは同所外で受けた賭客の申込みを集計して整理し、また、当該プロ野球試合の結果に基づいて勝者に支払うべき賭金およびその中から徴収すべき寺銭の集計などをし、さらに寺銭を徴収する等の方法により行なった本件「野球賭博」開催の所為は、賭博場開張図利罪を構成する

と判示しました。

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