刑法(賭博開張等図利罪)

賭博開張等図利罪(6)~「賭場開張罪の成立時期」を説明

 前回の記事の続きです。

賭場開張罪の成立時期

 賭博開張図利罪(刑法186条2項)は、

図利目的で賭場を開張したとき

に既遂となります(既遂の説明は前の記事参照)。

 賭博開張図利罪の既遂を認めるに当たり、その賭場で現に賭博が行われることを要しません。

 この点に関する以下の判例があります。

大審院判決(明治43年11月8日)

 裁判所は、

  • 苟も賭博を為すべき場所を開き、賭博者を誘引し、寺銭、手数料等の名義をもって金銭上の利益を得ん事を図りたる以上は賭場開張罪は完全に成立し、その賭場に賭博を為したる事実あると否トは本罪の成立に何らの影響あるものに非ず

と判示しました。

大審院判決(昭和3年2月27日)

 裁判所は、

  • 現にその賭場において博戯又は賭事を為したる者あると否と(中略)を問うの要なきものとす

と判示しました。

大審院判決(大正2年10月7日)

 裁判所は、

  • 苟も偶然の輸贏(勝敗)に関し、を財物をもって博戯又は賭事を為す設備を為し、よって財産上の利益を獲得せんとしたる者は、すなわち賭場開張罪の犯人をもって論ずべく、現にその賭場において博戯又は賭事を為したる者あると否とを区別する要なきをもって

と判示しました。

大審院判決(昭和3年2月27日)

 裁判所は、

  • 賭博場の開張罪の成立には利益を得るの目的を持って賭博を為さしむべき場所を開設する行為あるをもって足り、現にその賭博場において博戯又は賭事を為したる者あるときと否と、開張者が現実に利益を収得したると否とを問うの要なきものとす

と判示しました。

大審院判決(昭和15年9月26日)

 裁判所は、

  • 苟も偶然の輸贏(勝敗)に関し、財物をもって博戯又は賭事を為す設備を為し、よって財産上の利益を獲得せんとするは賭場開張罪をもって論ずべく、現にその賭場において博戯又ハ賭事を為したる者あると否とはこれを問うの要なきものとす

と判示しました。

東京高裁判決(昭和57年6月30日)

 野球賭博の事案で、裁判所は、

  • 贈博開張図利罪は、利を図る目的で賭博場を開張することによって成立するものである
  • すなわち、賭博場開設の対価として、財産的利得をしようとする意思の下に、賭博場を設けて賭博の機会を与えることを要するとともに、それでもって足りるものと言うべく、現に賭博が行われること、または、開張者が現実の利得を得ること等を必要とするものではなく、況や賭客または利得の多寡の如きは、何ら犯罪の成否に関係ない事柄である
  • これを本件に即して言えば、被告人が、Aと共謀の上、野球賭博の賭金からカスリを得る目的をもって、被告人方を本拠と定め、一口の申込金額を200円とし、大会参加高校の組合せ表を作成し、かつ連勝単式の方式により優勝校及び準優勝校を予測指示させることによって、右組合せ表を賭客に配布し、以後いつでもその申込みを受付ける態勢を整えた時点において、賭博開張図利罪は成立するものと言うべきである

と判示しました。

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