刑法(賭博開張等図利罪)

賭博開張等図利罪(9)~罪数①「賭場開張行為の回数と賭博開張図利罪の罪数の考え方」を説明

 前回の記事の続きです。

賭場開張行為の回数と賭博開張図利罪の罪数の考え方

1⃣ 賭場の開張が1回と評価されるものである限り、その期間内に数回連続して賭博が行われ又は賭客から数回にわたって寺銭等の対価を取得しても一罪の賭場開張図利罪(刑法186条2項)が成立するにすぎません。

 この点に関する以下の判例があります。

大審院判決(大正3年3月28日)

 裁判所は、

  • 賭博場開張罪は、利益を得るの目的をもって賭博を為さしむべき場所を開設するによりて成立するものにして、現実に利益を取得したることは、該罪の構成に必要なる事実にあらざれば、数回連続して客より口銭を取得したる事実ありたりとてこれを根拠として連続犯なりと断定するを得ず

と判示しました。

大審院判決(大正4年3月1日)

 裁判所は、

  • 犯人が意思継続して一定の店舗を本拠とし、自ら注文者たる賭者の相手方となり、空相場と称する賭博を開張して手数料を徴して利を図り、注文者として賭金を為す者に数名あり、かつ数回にわたりて注文手仕舞が行われ、かつ数次に手数料を徴し、かつ開張の始めより終に至るまで十数日を経過したる事実ありとするも、要するに単一意思の発動により単一なる賭博開張行為を為したるものにして、決して注文の口数に応じ、若しくは注文者の員数に応じて各別賭揚開張の行為を構成するものにあらず

と判示しました。

2⃣ 賭場の開張が各別の意思の発動によるものであるため1個の行為と認められない場合は、それぞれ賭博開張図利罪が成立し、各賭博開張図利罪は併合罪の関係になります。

 この点に関する以下の判例があります。

最高裁判決(昭和25年9月14日)

 裁判所は、

  • 賭場開張図利罪は犯人が自ら主宰者となりその支配の下に賭博をさせる一定の場所を提供し、寺銭、入場料等の名目で利益の収得を企画することによって成立するのであり、所論の如くこれを慣行犯と解すべきいわれはない
  • 原審は、判文上明らかなように被告人が各別の意思発動により、自宅及び(中略)A方において、それぞれ日時を異にし、各別の賭場開張図利の行為をなしたものたることを認定しているのである
  • 原判決がかかる事実認定の下にこれを併合罪とみたのはむしろ当然

と判示しました。

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