刑法(特別公務員職権濫用罪)

特別公務員職権濫用罪(3)~「本罪の行為」を説明

 前回の記事の続きです。

特別公務員職権濫用罪の行為

 特別公務員職権濫用罪(刑法194条)の行為は、

公務員が一般職務権限に属する事項につき職権行使に仮託して、実質的・具体的に違法・不当な行為をして(職権を濫用して)、人を逮捕し、又は監禁すること

をいいます。

 「職権を濫用して」の意義については、公務員職権濫用罪(刑法193条)と同様にであり、公務員職権濫用罪(2)の記事で参照ください。

 「逮捕し、又は監禁した」における逮捕監禁の意義については、逮捕罪及び監禁罪(刑法220条)のそれと同様です。

 「逮捕」の意義の説明は、逮捕・監禁罪(5)の記事を参照ください。

 「監禁」の意義の説明は、逮捕・監禁罪(6) の記事を参照ください。

 違法に逮捕監禁を開始する場合のみならず、逮捕監禁の理由がなくなった者を釈放しないで拘束を続けることも逮捕、監禁に含まれます。

 例えば、警察官が功名心から覚せい剤事案を捏造して無実の者を逮捕したのは特別公務員職権濫用罪に該当するとした裁判例があります(東京地裁判決 平成9年10月17日)。

 他の公務員の権限を利用して、逮捕監禁を行わせた場合は、逮捕監禁をした公務員が自己の拘束権限を濫用したものではないので、特別公務員職権濫用罪を構成しませんが、逮捕監禁罪の間接正犯となり得るとされます。

 例えば、警察官が逮捕した者について、犯罪の嫌疑又は勾留の理由がないことを知りながら、証拠を偽造して検察官に送致し勾留するに至らしめた場合は、特別公務員職権濫用罪ではなく、逮捕監禁罪の間接正犯が成立することになります。

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