恐喝者が相当の対価を支払っても、反対給付を約束しても、財物の交付が民事上の契約として有効に成立したとしても、恐喝罪は成立する
恐喝罪(刑法249条)における「財産上の損害」について説明します。
恐喝罪は、相手方を恐喝して畏怖させ財物の交付を受けた以上、
- 恐喝者が相当の対価を支払っても
- 反対給付を約束しても
- 反対給付をする真意があったとしても
- 財物の交付が民事上の契約として有効に成立したとしても
恐喝罪は成立します。
この点について、以下の判例があります。
名古屋高裁金沢支部判決(昭和29年5月1日)
この判例で、裁判官は、
- 雑誌に広告を掲載すべき目的をもって、財物の交付を受けた場合であっても、苟も、人に脅迫を加え、畏怖の念を生ぜしめた結果、財物の交付を受けたものである以上、その財物に対し、反対給付をなすべきことを約したと否とによらず、また、反対給付を為すの真意があったと否とによらず、該行為は、すなわち、恐喝罪を構成すべく、その反面、両者間の合意が民法上の一種の契約として、有効に成立したとしても、かかる事情は、毫も恐喝罪の成立を妨げるものではない
と判示しました。
大審院判決(明治44年12月4日)
裁判官は、
- 恐喝者が相手方に対して、1坪について時価より約50銭高い価額で土地買収の交渉をしたが、同人が応じないので、同人を恐喝して所有土地を売り渡す旨の意思表示をさせた事案で、時価相当もしくはそれ以上の代価を給付しても、恐喝罪は成立する
旨判示しました。
大審院判決(大正8年12月3日)
この判例で、裁判官は、
- たとえ借財の目的をもって金員の交付を受けたる場合といえども、いやしくも害悪の来たるべきことを通告して畏怖の念を生ぜしめたる結果、これが交付を受けたる以上は、恐喝罪を構成するものにして該行為が消費貸借として有効に成立することは、恐喝罪の成立を妨げるものにあらず
と判示し、財物の交付が民事上の契約として有効に成立する場合でも、恐喝罪は成立するとしました。