強制性交等罪の既遂時期(性器が没入した時点)
強制性交等罪(刑法177条)の既遂時期は、
性器を被害者の性器に没入した時点
で既遂に達します(未遂と既遂の考え方については前の記事参照)。
性器を被害者の性器に没入した時点で既遂に達するので、射精することを要しません。
この点について判示した以下の判例があります。
大審院判決(大正2年11月19日)
裁判官は、
- 強姦罪(現行法:強制性交等罪)の既遂は、交接作用、すなわち陰茎の没入をもって標準となすべきものにして、生殖作用を遂げたるを必要とせず
と判示しまし、性器を被害者の性器に没入した時点で強制性交等罪は既遂となるとしました。
強制性交等罪の既遂を認めるにあたり、陰茎の没入は、一部で足りるとする判例があります(仙台高裁判決 昭和30年5月31日)。
学説では、性器の結合で足りるとする説もあります。
いずれにせよ、強制性交等罪の既遂を認めるにあたり、陰茎全部の没入は要しないと解されています。
暴行・脅迫があっても、性交が被害者の承諾に基づくものであれば、強制性交等の未遂は成立しても、既遂は成立しない
強制性交等罪は、性交はしなくても、暴行・脅迫をした時点で実行の着手が認められ、この時点で少なくとも、強制性交等未遂罪の成立します。
(暴行・脅迫をした時点で強制性交等罪の実行の着手が認められることについては、前の記事参照)
ここで、暴行・脅迫があっても、被害者が暴行・脅迫によって反抗困難な状態を利用して強制性交されたのではなく、被害者の真意に出た承諾や同情心などに基づいて性交が行われたような場合には、強制性交等未遂罪が成立するとしても、強制性交等罪の既遂は成立しません。
暴行・脅迫と強制性交との間に時間的間隔があったとしても、強制性交等罪が成立する
暴行・脅迫行為と強制性交との間に時間的間隔があったとしても、暴行・脅迫によって強制性交が行われたと認められる限り、強制性交罪が成立します。
脅迫行為と強制性交との時間的間隔が約2週間あった場合につき、強制性交等罪の成立が認められた事例があります(高松高裁判決 昭和47年9月29日)。