共同正犯
公然わいせつ罪(刑法174条)の共同正犯について、参考となる判例として以下のものがあります。
東京高裁判決(昭和32年4月12日)
裁判官は、
- 公然わいせつ罪は、わいせつ行為を不特定又は多数人の覚知し得る状態、すなわち公然たる状態においてなすことによって成立するものであるから、わいせつ行為自体をなさない者といえども、わいせつ行為をなすものと互いに意思を連絡させて、これを公然になす場合は、本件の構成要件である公然の状態を作る点について共同加功が存するが故に、わいせつ行為者とともに共同正犯の責任を免れ得ないものと解する
と判示しました。
名古屋高裁判決(昭和40年2月18日)
劇場の支配人代理をしていた被告人が、ストリッパーとの間で、演技に際し、陰部を露出しない旨を特別に指示しない限り踊りながら陰部を露出することが常識となっているいわゆる「特出し」の契約をした上、 自己が支配人代理をしていた劇場で同ストリッパーに陰部を露出させて踊らせた事案において、被告人に公然わいせつの共同正犯の成立を認めました。
福岡高裁判決(昭和27年8月30日)
興行師である被告人が、あらかじめ踊り子の演技内容がわいせつな行為に当たることを熟知した上で劇場に出演させた事案において、被告人について公然わいせつの共同正犯の成立をみとめました。
幇助犯
公然わいせつ罪における幇助犯について、参考となる判例として以下のものがあります。
劇場責任者である被告人が、踊り子のわいせつな演技を目撃しながら、興行主と踊り子に対して、微温的な警告を発するにとどめ、依然その公演を継続させたとして、興行主と踊り子両名の公然わいせつ行為を幇助したと認定しました。
舞台上で演じられたショーに照明を当てた照明係である被告人に対し、公然わいせつ罪の幇助犯を認定しました。
東京地裁判決(平成8年3月28日)
同伴客に対し、わいせつ行為をしやすく、かつ、その姿態を互いに見せ合って、更に性的感情を刺激し、高めるような雰囲気及び構造となっている客室を提供した、いわゆるカップル喫茶の経営者に対し、公然わいせつ罪の幇助犯と認定しました。
公然わいせつ罪の記事一覧(全4回)
公然わいせつ罪(1) ~「公然わいせつ罪とは?」「保護法益」「『公然』の意義」を判例で解説~
公然わいせつ罪(2) ~「わいせつ行為の意義」を判例で解説~
公然わいせつ罪(3) ~「故意」「既遂時期」「罪数」を判例で解説~
公然わいせつ罪(4) ~「共同正犯」「幇助犯」を判例で解説~