刑法(現住建造物等放火)

現住建造物等放火罪(7) ~「現住建造物等放火罪の客体である汽車・電車・艦船・鉱坑とは?」を説明~

 前回の記事の続きです。

現住建造物等放火罪の客体である「汽車・電車」「艦船」「鉱坑」とは?

 現住建造物等放火罪の条文は、刑法108条において、

放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑に処する

と規定されます。

 この条文中にある「汽車・電車」「艦船」「鉱坑」について説明します。

汽車・電車

 汽車とは、

蒸気機関を動力として一定の軌道上を運行ずる交通機関

をいいます。

 電車とは、

電気を動力として一定の軌道上を運行する交通機関

をいいます。

 汽車、電車には、モノレールリニアモーターカーも含まれます。

艦船とは?

 艦船とは、

軍艦その他の船舶

をいいます。

 軍艦とは、外国の軍艦を指します(憲法9条)。

 小型船や櫓櫂船船舶法20条)などの小規模の船舶を含むか否かについては、学説上争いがあります。

 この点、学説として、

  1. 放火罪じ公共危険罪である往来危険罪刑法125条)の判例において、「艦船とは、その大小形状の如何を問わず、各種の船舶を指称するものと解すると相当とす」として、をもって水上を往復し、長さ約7.9mにすぎない木造漁船を艦船に当たるとしていること(大審院判決 昭和10年2月2日)、法文上格段の制限がないこと、建造物についても掘っ立て小屋、物置小屋等も人の出入し得る限り含むとしていることなどから、本条についても小規模船舶を含むとする説
  2. 艦船という日常用語的意味からしても、汽車・電車に準じて考えられる程度の大きさを有することを必要とするとする説
  3. 乗船している者の生命・身体・財産等の危険が特定個人の法益でなく、公共の危険と解される程度のものかどうかを基準とすべきであり、モーターボートは含まれないが、十数名が乗れるような渡船は含まれるとする説

などがあります。

鉱坑とは?

 鉱坑とは、

鉱物採取のための地下設備

をいいます。

 鉱物とは、金鉱、銀鉱、銅鉱、石炭、石油などをいいます(鉱業法3条)。

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