前回の記事の続きです。
逮捕罪・監禁罪と強要罪との関係
逮捕罪・監禁罪(刑法220条)と
との関係を説明します。
被害者は逮捕・監禁されるととによって当然義務がないにもかかわらず身体的拘束を受けるのことから、その限りでは暴行・脅迫による逮捕監禁罪は強要罪の特別の場合であると解してよいため、逮捕監禁罪が成立する場合には、強要罪の適用は排除されます。
もっとも、逮捕監禁により、身体的拘束の忍受以外の義務のないことを行わせ、又は行うべき権利を妨害した場合(例えば、逮捕監禁した上、証書の作成を強要する場合)は、逮捕監禁罪と強要罪の両罪が成立します。
逮捕罪・監禁罪と強要罪の両罪が成立行為として、以下のものが挙げれらます。
- 強要して詫状を書かせる(最高裁判決 昭和34年4月28日)
- 被害者の意に反する自供をさせ、口供録取書と題する書面の末尾に署名指印させる(最高裁決定 昭和47年10月23日)
- 逮捕して義務のない文書を作成させる(名古屋高裁判決 昭和45年8月25日)
- 確認書の署名押印又は謝罪文の作成を要求する(福岡高裁判決 昭和57年6月25日)
逮捕罪・監禁罪と強要罪とは牽連犯となる
逮捕罪・監禁罪と強要罪との関係について、学説は牽連犯説をとっています。
最高裁判決(昭和34年4月28日)の一審判決は、監禁罪と強要罪を牽連犯として認定しています。
神戸地裁判決(平成14年12月9日)は、被告人が、多額の詐欺被害を被ったため、その弁償を確約させるため、相手を監禁して労働契約書及び念書を書かせたという事案につき、監禁致傷罪と強要罪とが成立し、両罪の関係は牽連犯であるとしています。