刑法(逮捕・監禁罪)

逮捕・監禁罪(34) ~「逮捕罪・監禁罪と恐喝罪との関係」を説明~

 前回の記事の続きです。

逮捕罪・監禁罪と恐喝罪との関係

 逮捕罪・監禁罪(刑法220条)と

との関係を説明します。

 かつて、大審院の判例は、人を逮捕監禁した上、これを脅迫して財物を交付させる場合は、逮捕監禁罪と恐喝罪とは手段と結果の関係にあるとして牽連犯刑法54条1項後段)となるとしていました。

 大審院判決(大正15年10月14日)は、

「1行為が1犯罪に対し刑法54条に規定する手段としての関係があるというには当該行為が当該犯罪の性質上、その手段として普通に用いられるものであることをもって足りるのであり、必ずしも二者の間に必然又は当然の牽連関係の存在することを要するものではないのであって、原判示のような事実関係の場合においては不法監禁と恐喝未遂との間に上記の関係の存在を認め得る」

としました。

 しかし、以下の最高判決で、逮捕監禁罪と恐喝罪とは牽連犯ではなく、併合罪の関係になるとし、判例を変更しています。

最高裁判決(平成17年4月14日)

 事案は、被告人が、共犯者らと共謀して、被害者から金品を喝取しようと企て、被害者を監禁し、その際被害者に対して加えた暴行により傷害を負わせ、これら監禁のための暴行等により畏怖している被害者をさらに脅迫して現金等を喝取したというものです。

 最高裁は、

「恐喝の手段として監禁が行われた場合であっても、両罪は犯罪の通常の形態として手段又は結果の関係にあるものとは認められず、牽連犯の関係にはないと解するのが相当である」

と判示して、前記大審院判決(大正15年10月14日)の牽連犯とする判例を変更し、監禁致傷罪と恐喝罪は併合罪になるとしました。

 なお、逮捕監禁と恐喝の各実行行為が重要部分で重なり合う場合には、逮捕監禁罪と恐喝罪とは観念的競合の関係に立つ場合があるとされます。

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