刑法(拐取者身の代金取得・要求罪)

拐取者身の代金取得・要求罪(4) ~「本罪が成立するには、犯人が『被害者の安否を憂慮する者が実際に憂慮していること』を認識・容認していること要する」を説明

 前回の記事の続きです。

 この記事では、拐取者身の代金取得罪、拐取者身の代金要求罪(刑法225条の2第2項)を「本罪」といって説明します。

本罪が成立するには、犯人が「被害者の安否を憂慮する者が実際に憂慮していること」を要する

 本罪は、刑法225条の2第2項に規定があり、

第1項 近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、無期又は3年以上の懲役に処する

第2項 人を略取し又は誘拐した者が近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をしたときも、前項と同様とする

と規定されます。

 本罪が成立するには、犯人が「被害者の安否を憂慮する者が実際に憂慮していること」を認識・容認していることを要します。

 「近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をし」という部分は、目的犯における目的ではなく、構成要件的行為です。

 なので、本罪の成立を認めるには、

犯人が、これらすべての事実について認識・認容していること

を要します。

 したがって、

  • 憂慮する者と思ったが実は無関係な第三者であった場合
  • 憂慮するはずの者が全く憂慮しなかった場合

は、本罪に未遂処罰の規定がない以上、本罪は成立せず、不可罰とされます。

 ただし、恐喝未遂等が成立する可能性はあります。

次の記事へ

略取、誘拐、人身売買の罪の記事一覧