前回の記事の続きです。
この記事では、拐取者身の代金取得罪、拐取者身の代金要求罪(刑法225条の2第2項)を「本罪」といって説明します。
身分犯、共同正犯(共犯)
本罪を身分犯とみるかどうかについては、肯定説と否定説に分かれていますが、肯定説が多数説となっています。
肯定説の根拠として、本罪の主体が条文で「人を拐取した者」に限定されている点が挙げられます。
したがって、略取・誘拐者以外の者が、拐取者身の代金要求罪の要求行為に加担した場合には、刑法65条1項(身分犯の共犯)が適用されます。
ただし、本罪は恐喝罪(刑法249条)の単なる加重類型ではないので、刑法65条2項により恐喝罪の刑を科するのではなく、本罪の刑を科することとなります。
既遂時期
本罪は、
- 財物を交付させた時
又は
- 財物交付の要求の意思表示を発信した時
に既遂となります。
なお、要求の意思表示は発信だけで足りると解するのが多数説ですが、意思表示が相手方に到達することを要するという見解もあります。
意思表示の到達を必要とする立場に基づくのであれば、財物交付の要求が相手に到達の時点で既遂を認めることとなります。