これから11回にわたり、偽造有印私文書行使罪、変造有印私文書行使罪、偽造無印私文書行使罪、変造無印私文書行使罪、虚偽診断書行使罪、虚偽検案書行使罪、虚偽死亡証書行使罪(刑法161条)を説明します。
この記事では、上記各罪を適宜「本罪」といって説明します。
偽造・変造私文書行使罪、虚偽診断書等行使罪とは?
本罪は、刑法161条において、
第1項 前二条(私文書偽造罪等:刑法159条、虚偽診断書等作成罪:160条)の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する
第2項 前項の罪の未遂は、罰する
と規定されます。
刑法161条は、偽造私文書及び虚偽診断書等の行使に対する処罰をまとめて規定したものであり、未遂罪処罰規定を含みます。
法定刑
刑法161条の条文中ににある「…その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する」とは、本罪の法定刑は、
私文書偽造罪等(刑法159条)虚偽診断書等作成罪(刑法160条)と同じ法定刑である
という意味です。
本罪の法定刑は、刑法158条の定める偽造公文書行使罪の刑に比して軽く定められています。
これは、偽造公文書行使罪(刑法158条)の保護法益が、公文書偽造罪と同様に公文書の公共的信用ということにあり、一般に公文書の信用度が私文書のそれに比して高いという違いに基づくものです(最高裁決定 昭和34年9月22日)。
罪名
刑法161条の罪名は、
- 刑法159条1項の有印私文書偽造罪の行使つき、「偽造有印私文書行使罪」
- 刑法159条2項の有印私文書変造罪の行使つき、「変造有印私文書行使罪」
- 刑法159条3項の無印私文書偽造罪の行使つき、「偽造無印私文書行使罪」
- 刑法159条3項の無印私文書変造罪の行使つき、「変造無印私文書行使罪」
- 刑法160条の虚偽診断書作成罪の行使つき、「虚偽診断書行使罪」
- 刑法160条の虚偽検案書作成罪の行使つき、「虚偽検案書行使罪」
- 刑法160条の虚偽死亡証書作成罪の行使つき、「虚偽死亡証書行使罪」
となります。