刑法(賭博開張等図利罪)

賭博開張等図利罪(10)~罪数②「賭場開張図利罪と賭博罪(常習賭博罪)の罪数関係の考え方」を説明

 前回の記事の続きです。

賭場開張図利罪と賭博罪(常習賭博罪)の罪数関係の考え方

1⃣ 賭博開張者が自ら賭博行為に参加した場合、賭場開張図利罪と賭博罪(常習性がある場合は常習賭博罪)が成立し、両罪は併合罪となるとするのが確定した判例です。

 この点を判示した判例は、賭博罪(18)~「賭博罪と賭場開張図利罪との関係」を説明の記事参照。

2⃣ 具体的事案の中には、賭博開張行為として不可欠な行為が同時に賭博行為を含んでいるという場合もあります。

 このようなケースについて、賭博罪(又は常習賭博罪)は成立せず、賭場開張罪のみで評価すべしとした裁判例があります。

東京高裁判決(昭和52年4月14日)

 裁判所は、

  • 被告人が賭客と同じ立場で、両サイドやタイベット(※引き分けに賭けること)に金銭を賭けて勝負を争ったというのではなく、ディーラーの立場で、前示のように両サイド間の賭金の差額を得喪したりタイベットにおける賭金を得喪したりすることを目して賭博行為としているものと解される
  • しかし、この両サイド間の賭金の差額負担やタイベットにおける危険負担は、被告人がディーラーとして本件の「バカラ」賭博場を開張したことにともなう必然的なものであって、その自由な意思にまかされたものではない
  • それゆえ、被告人によるその負担等が賭博行為といえるかについては問題があるが、この点はしばらくおくとして、そのディーラーとしての負担等は右に述べたようにディーラーとしての役割に必然的にともなうものであって、本件で賭博開張図利の事実が認められる以上、これにふくめて評価がなされるべきであって、別個に(常習)賭博罪として可罰性をもつものではないと解するのが相当

と判示しました。

大阪高裁判決(平成17年1月20日)

 裁判所は、

  • 店が客と勝負していたことがあるという事実は原判決も説示するとおり、それ自体としては、店側において、賭客のバカラ賭博を成立させることによって、店がコミッション(寺銭)を取得して利益を図るための手段としての性質を有していたものに他ならないから、賭博開張図利罪に含めて評価されるべきものであり、賭博開張図利罪とは別個の常習賭博罪を構成するものではないと解される

と判示しました。

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