刑法(逃走の罪)

被拘禁者奪取罪(4)~「実行の着手時期、既遂時期」を説明

 前回の記事の続きです。

実行の着手時期、既遂時期

 被拘禁者奪取罪(刑法99条)の実行の着手時期と既遂時期を説明します。

 なお、「実行の着手」「既遂」の基本的な考え方の説明は前の記事で行っています。

 被拘禁者奪取罪の実行の着手時期は、

既存の拘禁から離脱させるための行為に着手したとき

です。

 そして、被拘禁者奪取罪の既遂時期は、

自己又は第三者の実力支配下に置いたとき

です。

被拘禁者を奪取する目的で暴行・脅迫を加えたがその目的を遂げなかった場合

 被拘禁者を奪取する目的で暴行・脅迫を加えたがその目的を遂げなかった場合について、

  1. 逃走援助罪(刑法100条)の既遂の成立を認める見解
  2. 被拘禁者奪取罪の未遂とする見解

とに分かれています。

 ①の見解によれば、未遂減軽の余地がないのに対し、②の見解によれば未遂減軽の余地があることになります(刑の減軽の説明は前の記事参照)。

 ①の見解は、理由として、

  • 単に逃走させる目的をもってする行為よりも奪取する目的のある行為の方が、犯情の悪いことが明瞭であるにもかかわらず、奪取目的による暴行・脅迫は被拘禁者奪取罪(刑法99条、法定刑 3月以上5年以下の拘禁刑)の未遂として、逃走援助罪の2項(刑法100条:3月以上5年以下の拘禁刑)の罪よりも刑が軽くなる場合があると解するのは不合理であること

を挙げています。

 これに対し、②の見解は、

  • ①の見解が理由で指摘する点は立法上の不備であり、量刑上考慮するほかない

とします。

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