道路交通法違反

酒気帯び・酒酔い運転(10)~「酒気帯び・酒酔い運転と緊急避難の関係」を説明

 前回の記事の続きです。

酒気帯び・酒酔い運転と緊急避難の関係

 緊急避難(刑法37条)とは、

自分または他人の生命、身体、自由もしくは財産に対する現在の危険を避けるために、やむを得ずにした避難行為であって、避難行為によって生じた害が、避けようとした害の程度を超えなかったもの

をいいます。

 緊急避難による行為は、違法性が阻却されて、犯罪を構成せず、処罰されません(緊急避難の詳しい説明は前の記事参照)。

 道路交通法違反(酒気帯び・酒酔い運転)にも緊急避難が成立し得ます。

 緊急避難の程度を超えた行為であるとされ、緊急避難の成立は認められなかったものの、刑が減軽された事例があります。

東京高裁判決(昭和57年11月29日)

 裁判所は、

  • 酒乱で粗暴癖のある弟の暴行による危難を避けるため、身を隠していた自動車を運転して逃げ出すほかに途はなく、被告人が自宅の前から酒気帯び運転の行為に出たことは、まことにやむを得ない方法であって、かかる行為に出たことは条理上肯定しうるところ、その行為から生じた害は、避けようとした害の程度を超えないものであったと認められる
  • しかしながらA橋を渡って市街地に人った後は、弟の車の追跡の有無を確かめることは困難であるが不可能ではなく、適当な場所で運転をやめ、電話連絡等の方法で警察の助けを求めることが不可能ではなかったと考えられるので、緊急避難の程度を超えたものとして情状によりその刑を免除する

と判示しました。

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