道路交通法違反

無免許運転(22)~「道路交通法違反(無免許運転)の罪数の考え方」を説明

 前回の記事の続きです。

道路交通法違反(無免許運転)の罪数の考え方

 複数回無免許運転を行った場合の道路交通法違反(無免許運転)の罪数の考え方については、以下を裁判例の考え方を採ればよいです。

広島高裁判決(昭和41年4月14日)

 裁判所は、

  • 被告人の内心的意図において、当初から生活の資を得るため、免許証なくして継続運転に従事する意思があったとしても、すべて無免許運転行為を包括一罪と認めるべきでなく、社会通念上、一個の運転行為と認められる範囲ごとに各一罪が成立するものと解する

と判示しました。

東京高裁判決(昭和43年4月17日)

 裁判所は、

  • 普通貨物自動車の無免許運転の途中、警察官に発見取調べを受け、その際、同警察官からその運転を禁じられたにもかかわらず、その場から引き続き無免許運転を行った場合は、その前後により一個の無免許運転として、両事実は併合罪の関係に立つと認めるべきである

と判示しました。

東京高裁判決(昭和44年10月13日)

 タクシー会社に勤務する自動車運転者の稼働期間中の無免許運転行為と罪数について、

  • 出庫から入庫までの運転行為について1つの無免許運転が成立する
  • 「出庫から入庫」「出庫から入庫」を繰り返した数分の無免許運転が成立し、各無免許運転は併合罪になる

とした判決です。

 裁判所は、

  • 第一種普通免許をもちタクシー会社に勤務する自動車運転者が営業用普通乗用自動車を運転するに必要な免許をもたないで一定期間自動車を継続運転した場合、各勤務会社における稼働期間中の無免許運転行為を包括して一罪と認めるべきではなく、当該稼働日の出庫時から入庫時までの運転行為ごとに一罪が成立すると解すべきである
  • 反覆継続された無免許運転又は免許外運転においては、その日時、場所、走行キロ数およびその車両も区々であるので、その都度出庫してから入庫するまでの運転につき同一の機会に継続してなされた一個の行為と認めるを相当とする

と判示しました。

東京高裁判決(昭和49年6月13日)

 無免許の被告人が約5か月間にわたり、連日自動車を運転した事案です。

 裁判所は、

  • 日々の運行計画により運転に従事する本件事実関係のもとにおいては、右期間にわたる被告人の運転行為は、単一の意思あるいは包括的な意思に基く一連の動作と目すべきものではなく、被告人の稼動日ごとの各運転行為が社会通念上一個の行為として、法第64条、第118条1項1号(※旧法)の罪の対象となるものと解するのが相当である
  • すなわち、稼動日ごとの無免許運転により交通上の危険を招く違法の事態が反復惹起される以上、これを基礎として無免許運転による道路交通法違反罪の罪数が決定されなくてはならない

と判示しました。

東京高裁判決(昭和51年10月18日)

 裁判所は、

  • 犯罪の個数は、社会通念から見た犯罪の行為の回数、法益侵害の回数、犯意の個数等種々の観点から総合的に観察して決すべきところ、無免許運転の罪は、特定の日に特定の車両を運転したときに、社会通念上一回の犯罪行為がなされ、そのつど道路交通の安全と円滑に対する危険が生じたものと考えられるから、たとえ犯意が数回にわたって同一又は類似のものであるとしても、特定の日に特定の車両を運転した毎に一罪が成立する

と判示しました。

東京高裁判決(昭和63年7月21日)

 裁判所は、

  • 原判決は、本件事故をひき起こしたころの無免許運転を第一の事実、本件事故の約20分後に本件事故現場を立ち去るころの無免許運転を第四の事実としてとらえ、両者を別個の犯罪として処断していることが明らかであるが、関係証拠を検討してみても、被告人が、本件事故現場等において、無免許運転をとがめられるなどして運転を断念し、その後更に犯意を新たにして無免許運転を開始したような事実は認められず、かえって、当然のこととして当初からの予定どおり無免許運転を継続した事実が認められるのであるから、本件事故の前後にまたがる無免許運転は、同一の犯意に基づき継続的に行われた一連の無免許運転で、法律上一個の道路交通法違反の罪が成立するに過ぎないものと解するのが相当である

と判示し、1個の道路交通法違反(無免許運転)が成立するとしました。

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