前回の記事の続きです。
「国際運転免許証」・「外国運転免許証」とは?
道交法107条の2は、国際運転免許証又は外国運転免許証を所持する者の自動車等の運転について定めた規定であり、
「道路交通に関する条約(以下「条約」という。)第24条第1項の運転免許証(第107条の7第1項の国外運転免許証を除く。)で条約附属書9若しくは条約附属書10に定める様式に合致したもの(以下この条において「国際運転免許証」という。)又は自動車等の運転に関する本邦の域外にある国若しくは地域(国際運転免許証を発給していない国又は地域であつて、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図る上で我が国と同等の水準にあると認められる運転免許の制度を有している国又は地域として政令で定めるものに限る。)の行政庁若しくは権限のある機関の免許に係る運転免許証(日本語による翻訳文で政令で定める者が作成したものが添付されているものに限る。以下この条において「外国運転免許証」という。)を所持する者(第88条第1項第2号から第4号までのいずれかに該当する者を除く。)は、第64条第1項の規定にかかわらず、本邦に上陸(住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)に基づき住民基本台帳に記録されている者が出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)第60条第1項の規定による出国の確認、同法第26条第1項の規定による再入国の許可(同法第26条の2第1項(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成3年法律第71号)第23条第2項において準用する場合を含む。)の規定により出入国管理及び難民認定法第26条第1項の規定による再入国の許可を受けたものとみなされる場合を含む。)又は出入国管理及び難民認定法第61条の2の15第1項の規定による難民旅行証明書の交付を受けて出国し、当該出国の日から3月に満たない期間内に再び本邦に上陸した場合における当該上陸を除く。第117条の2の2第1項第1号において同じ。)をした日から起算して1年間、当該国際運転免許証又は外国運転免許証(以下「国際運転免許証等」という。)で運転することができることとされている自動車等を運転することができる。ただし、旅客自動車運送事業に係る旅客を運送する目的で、旅客自動車を運転し若しくは牽けん引自動車によつて旅客用車両を牽けん引して当該牽けん引自動車を運転する場合、又は代行運転普通自動車を運転する場合は、この限りでない。」
と規定します。
「国際運転免許証」とは?
1⃣ 「国際運転免許証」(道交法107条の2)は、
道路交通に関する条約(ジュネーブ道路交通条約)24条1項の運転免許証で同条約附属書9又は同条約附属書10に定める様式に合致したものをいい、同条約の締結国のみに有効なもの
をいいます。
道路交通に関する条約24条1項の内容は、
「締約国は、自国の領域への入国を許可された運転者で、附属書8に定める条件を満たしており、かつ、他の締約国若しくはその下部機構の権限のある当局又はその当局が正当に権限を与えた団体から、適性を有することを実証した上で、発給を受けた有効な運転免許証を所持するものに対し、附属書9及び附属書10に規定する種類の自動車でその運転免許証の発給の対象となっているものを、新たな試験を受けることなく、自国の道路において運転することを認めるものとする。」
というものです。
道交法107条の2の規定は、道路交通に関する条約の規定を受けて定めたものです。
2⃣ 道路交通に関する条約24条1項の「附属書8の定める条件」とは、
- 国際交通において自動車の運転者が満たすべき条件のこと
であり、
「第24条に規定する条件に従って自動車を運転することができるための最低年齢は18歳とする。もっとも締約国又はその下部機構は、他の締約国が18歳未満のものに対して発給した二輪の自動車又は身体障害者用車両のみに係る運転免許証を認めることができる。」
と定めています。
3⃣ 道路交通に関する条約24条1項の「附属書9・附属書10」とは、
- 国際運転免許証の様式について定めたもの
であり、
- 「附属書9」の国際運転免許証の様式は、その国の免許証そのものが国際運転免許証の様式と一致しているもの
- 「附属書10」の国際運転免許証の様式は、その国の免許証が国際運転免許証と異なる様式の場合に新たに作成するもの
です。
その免許証の有効期間は、
- 「附属書9」の国際運転免許証の様式の場合は、発給国で定める有効期間
- 「附属書10」の国際運転免許証の様式の場合は、発給の日から1年間
とされています。
「外国運転免許証」とは?
1⃣「外国運転免許証」とは、
自動車等の運転に関する本邦(日本)の域外にある国若しくは地域の行政庁若しくは権限のある機関の免許に係る運転免許証
をいいます。
2⃣ 「自動車等の運転に関する本邦の域外にある国若しくは地域」とは、
- 国際運転免許証を発給していない国又は地域
をいい、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図る上で、本邦と同等の水準にあると認められる運転免許証の制度を有している国として、道交法施行令39条の4に定める
- エストニア共和国
- スイス連邦
- ドイツ連邦共和国
- フランス共和国
- ベルギー王国
- モナコ公国
- 台湾
に限るとしています。
3⃣ 「行政庁若しくは権限のある機関の免許に係る運転免許証」は、
日本語による翻訳文で道交法施行令39条の5に定める者が作成したものが添付されているものに限るもの
とされています。
なお、外国運転免許証の有効期間は、発給国で定める有効期間になります。
道交法107条の2にある国際運転免許証等を「所持する者」とは
1⃣ 道交法107条の2にある国際運転免許証等を「所持する者」とは、
- 国際運転免許証又は外国運転免許証を所持する者のこと
をいいます。
「所持する」とは、
- 一般に支配する意思をもって、事実上その物、すなわち国際運転免許証又は外国運転免許証を自己が支配することのできる状態におくこと
をいうものとされています。
自らがこれを携帯している状態はもとより、日本国に入国してから定めた住居内又は会社、事業所等の自己の机、ロッカー内に保管している状態は、これを事実上支配できるものと認められるので「所持する」という概念に入ることになります。
しかし、自国に置いて来たような場合には、帰国後その国際運転免許証又は外国運転免許証を支配することができるかも知れませんが、日本国においては、それを事実上支配できる状態においたとはいえないので、所持するということにはなりません。
また、日本国に入国して、国際運転免許証又は外国運転免許証を紛失したときは、それを「事実上支配できる状態においた」 とはいえないので、その紛失していることの情を知って、運転すれば無免許運転となると解されています。
2⃣ 国際運転免許証又は外国運転免許証を「所持する者」の中から「第88条第1項第2号から第4号までのいずれかに該当する者を除く。」(本条カッコ書)旨の規定により、いかに有効な国際運転免許証又は外国運転免許証を所持する者であっても、その者が、
- 国内免許の拒否(欠格期間中)又は保留されている者
- 国内免許の取消(欠格期間中)又は停止されている者・国際運転免許証等の運転禁止の処分を受けている者
のいずれかに該当する者には、日本国での自動車等の運転を認めないこととしています。
ただし、日本国において運転免許の取消・停止等の行政処分を受けた者が、その処分中に受けた外国免許は有効であり、それに基づいて発行された国際運転免許証又は外国運転免許証もまた有効となります。
道交法107条の2にある「第64条第1項の規定にかかわらず」とは?
道交法107条の2にある「第64条第1項の規定にかかわらず」とは、
- 道交法64条1項の規定を排除する
という意味です。
道交法64条1項は、無免許運転に関する規定ですが、この規定は、公安委員会の運転免許を受けている者以外の全ての者について自動車等を運転することを禁止しているため、本条(道交法107条の2)の規定による国際運転免許証又は外国運転免許証を所持する者も、観念的には自動車等の運転が禁止されることとなります。
そこでこの者については、本条において一般的禁止を解除するとともに、本条と矛盾対立する道交法64条1項の規定の適用を排除したものです。
道交法107条の2にある「本邦に上陸した日から起算して1年間」とは?
1⃣ 道交法107条の2にある「本邦に上陸した日から起算して1年間」とは、
- 日本国の領土のいずれかの地に立ち入った日から1年間
という意味です。
国際運転免許証又は外国運転免許証を所持する者は、
入国した日から1年間
は、国際運転免許証又は外国運転免許証で運転することができる自動車等を運転することができます。
「1年間」といってもその免許証の有効期限がある場合に限られ、入国した日から有効期間が残り7月というときは、入国した日から7月間しか運転できないことになります。
つまり、日本国内において、国際運転免許証又は外国運転免許証で運転をするには、
- 入国した日から1年以内であること
- 国際運転免許証又は外国運転免許証の有効期限内であること
の2つの要件を満たす必要があります。
①②のどちらか一方の要件を満たしていない場合は無免許運転となります。
例えば、国際運転免許証又は外国運転免許証の有効期限はあるが(②の要件は満たす)、入国した日から1年を超えていた場合は(①の要件は満たさない)、無免許運転となり、警察に検挙されることとなります。
2⃣ 国際運転免許証又は外国運転免許証を所持する者が、1年を超えて日本に滞在し、引き続き自動車等を運転しようとするときは、公安委員会の免許を受けなければならないことになります。
つまり、1年を超えて日本に滞在する場合は、日本の運転運転免許証をとらなければ自動車等を運転できないということを意味します。
ここにいう「1年間」は「本邦に上陸した日」が起算日になるので、本邦に上陸してから1年6月になる者が、自国から国際運転免許証等を郵送してもらったとしても、その国際運転免許証又は外国運転免許証は有効な国際運転免許証等とはいえないので、それを所持して自動車を運転しても無免許運転となります。
3⃣ また、住民基本台帳に記録されている者が出入国管理及び難民認定法の規定による出国の確認、再人国の許可等を受けて出国し、当該出国の日から3月に満たない期間内に再び本邦に上陸した場合は、当該再上陸の日を国際運転免許証又は外国運転免許証で自動車等を運転することができる起算日としないと定められています。
例えば、国際運転免許証又は外国運転免許証を有する日本に入国した外国人が、一旦自分の国に帰国し、3か月後に日本に再入国した場合は、国際運転免許証又は外国運転免許証で自動車等を運転できる要件である上記の「①入国した日から1年以内であること」の要件がリセットされ、再入国した日から1年間は国際運転免許証又は外国運転免許証で自動車等を運転できるようになります。
これに対し、国際運転免許証又は外国運転免許証を有する日本に入国した外国人が、一旦自分の国に帰国し、2か月後に再び日本に入国した場合は、国際運転免許証又は外国運転免許証で自動車等を運転できる要件である上記の「①入国した日から1年以内であること」の要件がリセットされないので、最初に入国した日から1年が経過していれば、国際運転免許証又は外国運転免許証で自動車等を運転することができないとことになります。
これは、日本国に長期間滞在しているにもかかわらず、公安委員会の免許を受けず、上陸後1年が経過する前後に出国し、国際運転免許証又は外国運転免許証を再取得の上、再上陸するなど国際運転免許証制度を悪用する者が散見されることから、一定期間以上、日本国に滞在しており、かつ、短期間で帰国する者のうち、住民基本台帳に記録されている者が出国した場合に限って運転可能期間を制限することとしたものです。
道交法107条の2にある当該国転免許証等で「運転することができることとされている自動車等を運転することができる」とは?
道交法107条の2にある当該国際運転免許証等で「運転することができることとされている自動車等を運転することができる」とは、
- 国際運転免許証又は外国運転免許証の様式の中に記載されている自動車等を運転することができる
という意味です。
「自動車等」とは、自動車及び一般原動機付自転車のことです。
道交法107条の2にある「ただし、旅客自動車運送事業…この限りでない」とは?
道交法107条の2にある「ただし、旅客自動車運送事業…この限りでない」とは、
- 国際運転免許証又は外国運転免許証を所持する者であっても、旅客自動車運送事業に係る旅客を運送する目的で、旅客自動車を運転し、又は牽引自動車によって旅客用車両を牽引して当該牽引自動車を運転すること、又は代行運転普通自動車を運転することができない
という意味です。
このただし書きは、道路交通に関する条約5条の規定を道路交通法上で定めて明らかにしたものです。