前回の記事の続きです。
研究・調査費等の嘱託に対する対価が賄賂に該当するか否か
国立大学や官公庁の職員が、民間企業等から依頼を受けて研究や調査活動を行うことがあります。
この場合、これらの活動に必要な実費や報酬の支払を受けることが賄賂の収受に当たるかどうかが問題となります。
一般的にいえば、「実費の支払」は報酬性がないので、原則として賄賂に当たるとは考えられません。
これに対し、「報酬」については、調査等の内容が公務員の研究テーマの一部をなし、あるいはこれと密接な関係を有する場合には、職務との対価性は否定できず、賄賂に当たる場合もあると考えられます。
しかしながら、このような行為が一般に賄賂罪に該当するとするのは、学問的な調査研究の性格からして相当ではありません。
そこで、この問題に関しては、「報酬」が不法な報酬として「賄賂」といえるかどうかが問題となります。
調査・研究が学問的に正当な内容・方法のものである限り、これに対する合理的な範囲の報酬を不法な報酬ということは困難と考えられます。
しかし、例えば、
- あえて実際に反する調査結果を出すことを意図して調査を行い、これに対する報酬を受領するような場合
は不法な報酬に当たる場合といえます。
研究に対する報酬についての裁判例として、以下のものがあります。
名古屋地裁判決(平成11年3月31日)
裁判所は、
- 国立大学医学部教授が製薬会社との共同研究を実施するために行った学内外での指導助言のうち、学外での企業の経済活動に結びついた部分は本来の職務行為ではないものの、学内での指導と密接不可分な職務の執行に密接な関係を有する行為であり、その指導助言に対する謝礼は、その額が余分に費やした労力に対する謝礼として社会通念上相当と認められる範囲にとどまるときは職務外の私的活動に対する報酬として賄賂性が否定されるが、本件各金員の供与は社会的相当性の範囲を逸脱しており賄賂に当たる
としました。