少年法

少年事件(1)~「少年事件の刑事手続の流れ(警察から検察庁への事件送致、家庭裁判所から検察官への事件の逆送)」を説明

少年事件の刑事手続の流れ

① 警察から検察庁への少年事件の送致

1⃣ 14~19歳の少年が犯罪を犯して警察に検挙されて事件として取り扱われると、警察は事件を検察庁に送致します(刑訴法246条)。

 ただし、14~17歳が犯した犯罪が法定刑が罰金以下(法定刑が罰金、科料、拘留しなかない罪)の刑に当たる事件であった場合は、警察は事件を検察庁に送致するのではなく、事件を直接、家庭裁判所に送致します(少年法41条前段)。

 これは、14~17歳が犯した犯罪が法定刑が罰金以下の刑に当たる事件は、刑事処分に付されることがないためです(少年法20条)。

2⃣ さらに詳しく説明すると、14~17歳が犯した犯罪が法定刑が罰金以下の刑に当たる事件について、家庭裁判所は刑事処分相当として検察庁に事件を送致(検察官送致決定)することがないため、警察は事件を検察庁に送致するのではなく、事件を直接、家庭裁判所に送致するものです。

 18、19歳の少年(特定少年)が犯した法定刑が罰金以下の刑に当たる事件については刑事処分に付すことができるため、警察は事件を家庭裁判所ではなく、検察庁に送致します(犯罪捜査規範210条但書)。

 これは、18、19歳の少年(特定少年)については、法定刑が罰金以下の刑に当たる事件であっても、家庭裁判所は刑事処分相当として検察庁に事件を送致(検察官送致決定)することができるためです(少年法62条1項)。

3⃣ なお、少年が14~17歳で罰金以下の罪の少年事件でも、告訴告発自首が行われている事件については、刑訴法242条245条の規定により、家庭裁判所ではなく、検察庁に事件を送ることになります。

② 検察官から家庭裁判所への少年事件の送致

 警察から少年事件の送致を受けた検察庁の検察官は、その少年事件を家庭裁判所に送致します。

 ただし、以下の場合は、検察官は、少年事件を家庭裁判所に送致せずに処分をすることができます。

1⃣ 犯罪の嫌疑が十分でないとき

 検察官は、その少年事件の被疑者となっている少年が、犯罪を犯したと疑うに足りる嫌疑が十分でないと判断した場合は、その少年事件を家庭裁判所に送致せず、不起訴処分とすることができます。

 これは、少年法42条1項

  • 検察官は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があるものと思料するときは…家庭裁判所に送致しなければならない

と規定していることから、犯罪の嫌疑があるといえない場合は、家庭裁判所に送致しないことができるものです。

2⃣ 少年が捜査を遂げる前に成人に達した場合

 例えば、事件を起こした少年の年齢が19歳11か月であり、もうすぐ20歳になる場合で、少年が20歳になるまでにやむを得ず捜査を遂げることができない場合は、検察官はその少年事件を家庭裁判所に送致しないことができます。

 捜査の途中で少年が20歳になり成人になった場合は、検察官はその少年事件を成人の事件と同様に検察官において処分(起訴・不起訴)することができます。

 この点に関する以下の判例があります。

最高裁判決(昭和45年5月29日)

 裁判所は、

  • 犯行時の年令19歳2か月の少年の業務上過失傷害被疑事件について、警察における捜査の終結が遅滞したため被疑者が成年に達して家庭裁判所の審判を受ける機会が失われたとしても、それが捜査に従事した司法巡査の勤務先警察署内における配置の変更、他事件の処理等の事情によるものであるときは、捜査官の措置にいまだ重大な職務違反があるとはいえず、その捜査手続を違法とすることはできない

と判示しました。

最高裁決定(平成25年6月18日)

 裁判所は、

  • 犯行時16歳の少年の業務上過失傷害被疑事件について、検察官への事件送致までに約2年11か月を要した上、一旦は嫌疑不十分を理由に不起訴処分(家庭裁判所へ送致しない処分)とされたため、被疑者が成人に達して家庭裁判所で審判を受ける機会が失われたとしても、運転者の特定に日時を要し、検察官が嫌疑不十分と判断し不起訴処分にしたのもやむを得ないなどの事情がある場合には、その後に事件を再起してした公訴提起が無効であるとはいえない

と判示しました。

③ 家庭裁判所の検察官への少年事件の送致(逆送)

1⃣ 家庭裁判所は、検察官から送致を受けた少年事件を

  • 刑事処分相当と判断するとき

    又は

  • 少年が年齢超過したとき(家庭裁判所の手続を進めるなかで少年の年齢が20歳に達したとき)

は、「検察官送致決定」を行い、その少年事件を検察庁に送致します(これを「逆送」といいます)。

2⃣ 家庭裁判所から少年事件の送致を受けた検察官は、

  • 刑事処分相当で逆送を受けた場合は、原則、その少年を起訴する(これを「強制起訴」といいます)
  • 年齢超過で逆送を受けた場合は、その少年を起訴するか起訴猶予にするかの判断を行い、事件を処分する

ということを行います。

 次の記事では、「検察官送致決定」について詳しく説明します。

少年事件の記事一覧

少年事件(1)~「少年事件の刑事手続の流れ(警察から検察庁への事件送致、家庭裁判所から検察官への事件の逆送)」を説明

少年事件(2)~「検察官送致決定(逆送)とは?」を説明

少年事件(3)~「起訴強制とは?」「起訴強制の例外」「逆送事件の一部不起訴の可否」「強制起訴した場合の少年の弁護人」などを説明