行動した結果に対しては、強い感情反応が生まれる
行動して生み出された結果に対しては、行動せずに同じ結果になった場合よりも、強い感情反応が生まれます。
この心理傾向は、以下の「株の話」で考えると分かりやすいです。
パターン1
山田さんは、A社の株を売って、B社の株を買おうか迷っていました。
しかし、結局、そうしませんでした。
あとになって、A社の株を売ってB社の株を買っていたら、120万円の利益を得られたことが分かりました。
➡ 行動せずに、120万円を得ることができなかったパターン
パターン2
山田さんは、B社の株を売って、A社の株を買いました。
※ B社の株とA社の株は同額なので、お財布に損失はない。
あとになって、B社の株を持ち続けていたら、120万円の利益が得られたことが分かりました。
➡ 行動して、120万円を得ることができなかったパターン
より深く後悔するのは、どちらのパターンでしょうか?
調査の結果では、92%の人が、行動して120万円を得ることができなかったパターン2の方が後悔すると答えました。
パターン2の場合、何もしなければ、120万円の利得を得ることができたのです。
行動した結果、良からぬ結果が起きると、「やっぱり、やらなければ良かった。時間よ戻れ。」と願ったことがある人は多いと思います。
このことから、行動して生み出された結果に対しては、行動せずに同じ結果になった場合よりも、強い感情反応が生まれることが分かります。
(余談1)いつも同じものを注文をする
私は、行ったことのある飲食店に行き、食べたことのある料理を注文することが多いです。
すき家に行けば牛丼、マックにいけばチーズバーガーとコーラです。
この事は、「行動して生み出された結果に対しては、行動せずに同じ結果になった場合よりも、強い感情反応が生まれる」ことに起因しています。
ほかの店や、ほかのメニューを選んで、いつも食べている料理より、おいしくなく、満足できなかった場合、後悔が大きいからです。
ハズしてしまうと「いつものを食べておけばよかった」とマイナスの感情がわいてきます。
今までやったことのない行動をすることで、大きく後悔をするリスクは避けたいので、人は、知らず知らずのうちに、同じ行動をとってしまうのです。
(余談2)多くの人が行動しない理由
多くの人は、失敗や損失を恐れて行動しません。
その理由は、「行動して生み出された結果に対しては、行動せずに同じ結果になった場合よりも、強い感情反応が生まれる」という心理作用を当てはめて説明することができます。
行動して失敗したり、損をすると、深く傷つくから、多くの人は行動しないのです。
行動せずに、現状維持をしたまま、損が発生した方が、感情反応が鈍く、心が深く傷つくことを回避できます。
多くの人は、自分の心が深く傷つく危険を回避したいという無意識の反応から、行動することを避けるのです。
そして、行動することよりも、安心・安全を感じられる「何もしない」という現状維持の方を選ぶのです。
(余談3)行動して得た喜びは大きい
「行動して生み出された結果に対しては、行動せずに同じ結果になった場合よりも、強い感情反応が生まれる」という心理作用は、プラスの感情にも当てはまります。
このことは、ギャンブルを用いて確かめられています。
人は、ギャンブルをして勝ったときの方が、ギャンブルをせずに同額のお金を手に入れたときより、喜びを感じます。
たとえば、ギャンブルをして得た10万円と、給付金として政府からもらった10万円とでは、ギャンブルをして得た10万円の方に心が踊ります。
行動した結果に対して、強い感情反応が生まれる理由
「行動した結果に対して、強い感情反応が生まれる」理由の核にあるのは、
- デフォルト(既定)の選択か
- デフォルトの選択ではないか(デフォルトから離れた選択か)
の違いにあります。
行動して、デフォルトから離れると、デフォルトが容易にイメージされるようになります。
そのため、行動して、デフォルトから離れた上で、悪い結果が出た場合、デフォルトが容易にイメージできる分、「やっぱり、ああしておけば良かった」と後悔しやすくなり、ひどく苦痛を味わうことになります。
たとえば、朝、会社に出勤して、上司や同僚に挨拶をすることはデフォルトの選択肢です。
ここで挨拶をしないという行動は、デフォルトから離れた選択であり、「いつも挨拶をしているのに今日は挨拶をしなかった」という後悔や、「なんであいつ挨拶しないんだ?」という非難の対象になります。
デフォルトから乖離(カイリ:離れること)は、強い感情反応を生むのです。
「行動した結果に対して、強い感情反応が生まれる」理由は、いつもと違う行動(不作為の行動を含む)をし、デフォルトから離れることにあるのです。