アンカリング効果とは?
アンカリング効果とは、ある未知の数値を見積もる前に、何らかの特定の数値を示されると、見積もった数値が、示された何らかの特定の数値の近くにとどまってしまう現象をいいます。
アンカリング効果により、人間の判断は、明らかに無関係な数字に左右されることが分かっています。
以下の実験を見てもらうと、アンカリング効果を理解できます。
経済学者ダニエル・カーネマンらの円盤実験
実験内容
① 回転式の抽選用の円盤を用意する(年末ジャンボ宝くじの当たり番号を決めるときに使うような円盤)。
② 円盤には0~100までの数字が書かれているが、一つの円盤は必ず10で、もう一つの円盤は必ず65で止まるようになっている。
③ 被験者を2つのグループに分け、円盤を回し、止まったときの数字をメモするように指示する。
④ 円盤は、片方のグループでは10で、もう片方のグループでは65で止まる。
⑤ その後に、被験者に「国連加盟国に占めるアフリカ諸国の比率はどのくらいですか?」と質問する。
実験結果
円盤で10を見せられたグループが答えた比率は、平均で25%だった。
円盤で65を見せられたグループが答えた比率は、平均で45%だった。
考察
円盤で示された数字は、「国連加盟国に占めるアフリカ諸国の比率」とは無関係であり、この数字が何かの役に立つことはありません。
にもかかわらず、被験者は円盤で示された数字が頭に残り、その数字にひっぱられて答えを出してしまったということです。
この現象が、アンカリング効果です。
海に浮かぶ船を、その場から動きずらくするために、海底の地面に錨(いかり)を打ちます。
この錨をアンカーといいます。
アンカーを打った船はその場にとどまります。
アンカリング効果は、アンカーが語源となっています。
アンカリング効果は日常的に起こっている
アンカリング効果は、日常的に起こっています。
事がある都度、アンカリング効果を意識できると、アンカリング効果にハマるのを回避できる可能性が高まります。
買い物
最初のアンカーは絶大な効果をもっています。
家電屋で大型テレビを買う時に、店員から「49万円です」と提示されたら、その価格で最初のアンカーが打たれます。
客は、49万円を軸にして、そこからいくら値引きできるかという交渉を始めます。
結果、客は、5万円を値引くこができたとします。
客は、その店で、49万で売られている大型テレビを、44万円で買うことができ、満足します。
しかし、ネットでは、同等クラスのテレビが30万円代で売られているなんてことは、ざらにあります。
49万円でアンカーを打たれていることに気づかない客は、44万円の価格に満足してしまうのです。
消費税
「ヨーロッパ諸国の消費税は25%前後です」
消費税率の増税が行われるときには、この手の言葉がアンカーとして、国民の脳内に打ち込まれます。
このアンカーにより、国民は、「ヨーロッパの消費税率25%くらいなら、日本の10%は、まだマシか。」という考えをもちます。
政治家は、ヨーロッパの高い消費税率をアンカーとして打つことで、国民を納得させ、デモや政権交代が起こらないように画策します。
「ヨーロッパ諸国の消費税は25%前後です」というアンカーが有効に作用するうちは、まだまだ消費税は上げられる可能性があります。
アンカリング効果が起こる理由
アンカリング効果が起こる理由は、人の脳が、連想により思考を行う作りになっているためです。
具体的には、脳は、最初に思い浮かんだことがまた別のことを呼び起こし、頭の中に次から次へと思考が展開されていく作りになっています。
この思考プロセスを連想活性化といいます。
(連想活性化については、「連想活性化とは?~人の思考は連想で行われる~」で詳しく書いています)
この連想活性化から、アンカリング効果が形成されます。
先ほどの大型テレビの例いうなら、最初に店員に提示された49万円から、妥当な割引価格を連想し、44万円で納得したという思考の流れが形成されています。
まとめ
まずは、日常生活において、アンカリング効果が起こっていることを知ることが大切です。
「どんなものでもアンカリング効果を及ぼす」と肝に銘じ、何らかの数字が示されたときは、アンカリング効果の発動を意識できることが重要になります。