非主張的な自己表現とは?
非主張的な自己表現とは、
自分の考え・気持ち・要望を率直に伝えない自己表現
をいいます。
具体的には、相手の顔色をうかがうなどし、不安や恐怖を芽生えさせてしまい、自分の意思をハッキリと表現しない(ハッキリと表現できない)自己表現の態様です。
非主張的な自己表現をしてしまう人は、不安症傾向が強い精神状態になっています。
相手に対して自己表現することに、無意識・反射的に不安、恐怖、抵抗感を作り出してしまうため、自己表現が、
- 曖昧な言い方になる
- 遠回しな言い方になる
- 遠慮がちな言い方になる
- オドオドした言い方になる
- 声がちいさくなる
- どもる
などしてしまい、相手に真意が伝わらないものになります。
相手も、あなたの真意を受け取ることができず、ぎくしゃくした気まずいコミュニケーションになってしまったり、相手をイラつかせたりしてしまいます。
そのため、ますます非主張的な自己表現しかできなくなっていきます。
非主張的な自己表現になってしまう要因
非主張的な自己表現になってしまう要因は、
- 衝突を避けたい・嫌われなくない気持ちが強すぎる
- 相手との力の差を感じ、気後れする
- 察してほしい気持ちが強すぎる(察してくれるだろうと思っている)
ことがあげられます。
「①衝突を避けたい・嫌われなくない気持ちが強すぎる」について
ハッキリとした自己表現をして、相手が不機嫌になったり、否定的な返しをしてきたら、誰でも傷つきます。
しかし、この点に関して、敏感に反応しすぎるのは、不合理であり、マイナスです。
自己表現したことに対して、相手が多少の不満や愚痴を言ったり、多少の否定的な反応を示しただけで、
「責められた」「怒られた」「否定された」
などと過敏に感情が動いてしまい、気持ちを乱してオドオドしてしまうと、良好・親密な関係を築くのが難しくなります。
相手のネガティブな反応に過剰に反応してしまうと、相手を恐れるようになり、自分を守るために、本能的に相手と距離をとるようになります。
それにより、次第に自由に言葉が出なくなり、率直・素直な自己表現をすることができなくなっていき、コミュニケーションが閉ざされていきます。
「②相手との力の差を感じ、気後れする」について
非主張的な自己表現をしてしまうと、相手に、
あなたが弱い存在
という印象を植えつけてしまいます。
同時に、自分自身の中でも、
自分は相手より弱い存在
という自意識を芽生えさせ、その自意識が、現実に態度(おどおどするなど)に現れるようになります。
そのため、非主張的な自己表現をしてしまうと、
相手が上、自分が下
という上下関係が自動的に形成されてしまいます。
非主張的な自己表現をすることは、相手に「どうぞマウントをとってください」と表現しているようなものです。
実際に、相手は、具体的な態度であなたのマウントをとらなくても、少なくとも精神的にあなたのマウントをとるようになるので、以後、不利な立ち回りを強いられることになります。
一度形成された上下関係は、そう簡単にはひっくり返りません。
これは、人間には、「一貫性の心理」という心理法則が働くためです。
「一貫性の心理」とは、自分の行動、言動、価値観に一貫性を保つように振る舞うことを好む心理をいいます。
「一貫性の心理」により、人は、前と違うこと(一貫性の通らないこと)に対し、不快感や違和感を感じ、強い心理抵抗が生じます。
なので、一度形成された上下関係を変えることは、「一貫性の心理」の力により難しいのです。
たとえば、学生の頃の先輩・後輩の上下関係は、社会人になっても引きずり続けます。
お互い社会人になり、久しぶりに会う後輩が「久しぶり!元気だった?」などとタメ口をたたいてきたら、あなたは強烈な違和感を感じることでしょう。
このように、非主張的な自己表現を続けてしまうと、
相手が上、自分が下
という後からひっくり返し難い上下関係が形成されてしまい、相手との力の差を感じ、気後れしてしまうようになります。
それにより、ますます非主張的な自己表現しかできなくなっていきます。
「③察してほしい気持ちが強すぎる(察してくれるだろうと思っている)」について
「言わなくても察する」、さらには「察しないヤツが悪い」という価値観は、日本では多くの人がもっている価値観です。
非主張的な自己表現をしてしまう要因の一つとして、
- 察してほしい気持ちが強すぎる
- 察してくれるだろうと期待する
という心理が根底にあることがあげられます。
「言わなくても分かってくれるだろう」は甘えです。
あなた自身が、相手の気持ちや考えを常に察することができないのと同じで、相手もあなたの気持や考えを常に察することはできません。
「言わなくても分かってくれるだろう」という甘えから脱することで、非主張的な自己表現ではなく、ハッキリとした自己表現ができる可能性が高くなります。
相手が察してくれることを期待するのではなく、自分が率直で適切な表現で伝えることを実行する方が、良い未来を作れるでしょう。
非主張的な自己表現をせずに、アサーティブな自己表現をする
非主張的な自己表現は、
- 不安や恐怖を抱え、おどおどする
- 相手にマウントをとらせる
- 自分に自信がもてなくなる
などし、自分の気持ちを率直・適切に相手に伝えることができないコミュニケーションです。
非主張的な自己表現をして、相手に合わせたり、何となく分かった雰囲気を作ることで、短期的には問題を解決するように見えます。
しかし、これは、問題を先送りしたり、後々、相手との関係にマイナスを生じさせるので、お勧めできません。
なので、解決方法として、非主張的な自己表現ではなく、できるだけ、
をすることが打開策になります。
アサーティブな自己表現とは、
自分の気持ちや考えを、率直かつ状況に合った適切な方法で、相手の気持ちに配慮した上で伝える自己表現
をいいます。
アサーティブな自己表現は、良好で親密な人間関係を作るための最善の自己表現の方法です。
このシリーズの記事まとめ一覧
【アサーション①】非主張的な自己表現 ~自己主張できない人のコミュニケーション~
【アサーション②】攻撃的な自己表現 ~相手を責めてしまう人のコミュニケーション~
【アサーション③】アサーティブな自己表現 ~自分と他人の両方を大切にするコミュニケーション~